為替をヘッジすべきか、しない方がよいか?

Tom Gavaghan
7月 6, 2017

最近の為替レートの激しい変動によって、多くの企業ではそのヘッジ方針が適切なものか、再考を迫られています。ウォールストリートジャーナル紙が引用した調査によれば、2015年の第2四半期で、為替変動の結果、米国企業は1社あたり平均で177百万ドル(1ドル100円換算で177億円)の為替差損を計上したとあります1

さらに強調すると、2014年の第4四半期では、アップル社は為替変動による差損が37.3億ドル(同じく100円換算で3,730億円)となり、収益の5%に相当する額を失いました2。通貨レートの激しい変動が続くので、為替ヘッジが奏功していない企業や、為替ヘッジを行っていない企業はいずれも、投資家のチェックが厳しくなり、株価は下落傾向にあります。

そもそもヘッジは一時しのぎに過ぎないという見方もあり、特に最近の激しい変動環境下ではなおさら、その立場に立つ人もいますが、ヘッジは、為替変動の影響を緩和させます。このことは、企業は株主の負託を受けているということからすれば当然のことで、ヘッジをすることは株主や投資家の期待に応えるということです。

もし効果的にヘッジしなくてはいけないのだとしたら、まず重要なのは、自社がどの通貨のリスクにどれくらい晒されているかを正しく理解することです。機能通貨以外の入金取引、出金取引があるか、その通貨の価値が変わったときに財務諸表にインパクトのある地域において、オペレーションを行っていたり、資産や負債を持っていたりしないか? 得てして企業は資産側と負債側、それぞれにリスクを抱えています。次に重要なのは、エクスポージャーの額と場所を正しく把握することです。例えばユーロ圏の顧客、ユーロ建ての契約は、ロシア・ルーブル建ての契約とは別の種類のリスクがあります。最後に、ヘッジ方針を決める時は、その為替リスクから会社を守るために必要な時間軸を明確に定めることです。

エクスポージャーの規模、範囲、そして時間軸が固まったならば、次になすことはヘッジ方針を文書化することです。これがあれば、ヘッジの目的に対して行ったヘッジがどれくらい有効だったのかを測定することができますし、株主等のステークホルダーと対話することができます。

デリバティブ商品の活用は、ヘッジ方針の中でもカギとなる部分です。フォワード、スワップ、NDF、バニラオプションは、一般に多くの企業の為替リスクをヘッジするうえで十分でしょう。エキゾチック・オプション(バリアー・オプションやアベレージ・オプションなど)や、オプションの組み合わせ(バタフライなど)は、時々やり過ぎになることもありますが、効果的な方法でしょう。このような取引はヘッジ会計などの規制や制度への対応を複雑にし、間接費も増えます。

見落としがちな点は、デリバティブを使う前に、為替エクスポージャーを最適化することです。多くの企業ではマルチラテラル・ネッティングをして、エクスポージャーを小さくしています。ネッティングは取引を相殺して正味のエクスポージャーの額を少なくするので、デリバティブ取引の額や件数を少なくさせることができます。エクスポージャーのデータを集めるだけの時よりも、ネッティングも行うことで、エクスポージャーの中身がより透明になると言えます。

ヘッジ方針に則ったオペレーションを開始するとき、忘れてはならいことは、ヘッジの効果を測定することです。たとえヘッジをしなかった時でも、以下の点で測定することは不可欠です。

1) 把握していたエクスポージャーは正しかったか? どのくらい適切に予測ができていたか?
2) ヘッジについて自分が下した決定(あるいは決めなかったこと)は、どのくらい効いたのか? ヘッジに関する意思決定が、どのくらいの財務的なインパクトを会社にもたらしたのか?

全ての会社にヘッジが必要というわけではありません。為替エクスポージャーの全てにヘッジをしなくてはならないわけではありません。ヘッジはすべて複雑なデリバティブ取引でなければならないというものでもありません。適切に為替リスクを評価して、それを文書化して、結果を測定し、改善するというPDCAサイクルを回すことが、有効なヘッジ方針が機能することにつながるのです。

 

参考文献(英語)

1. Currency Volatility Costs Soar – Wall Street Journal, September 22, 2015

2. Currency Swings Cost Apple More Money Than Google Makes In A Quarter – Business Insider, January 28, 2015

*本ブログは2015年5月の英語記事を翻訳したものです。オリジナルはこちら

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