英国のEU離脱(Brexit)により財務部門が直面する為替管理の課題

12月 26, 2017
John Campbell

 企業財務の現在の状況は、非常に不安定です。この不安定さはさまざまな形で現れていますが、昨年、世界を揺るがせた英国のEU離脱(Brexit)では、財務部門はあらゆる事態を想定して準備しなければならないという事実をあらためて認識しました。残念なことに、いつも準備ができているとは限りません。2016年4月、Deloitteが発表した調査結果によると、離脱を決める国民投票の前にBrexitに対する緊急対策計画を実施していたCFO(最高財務責任者)は半数にも満たなかったのです。

 英国を含めた各国の企業にとって、Brexitによる影響の中でも特に重要なのは為替相場の変動です。投票の直後、ポンドは31年ぶりの安値を更新。開票前の1ポンド=1.50ドルから、結果が発表された翌日には1ポンド=1.33ドルまで下落しました。その後も安値更新は続き、本原稿の執筆時点の直近数週間で持ち直してきたものの、ポンド相場は投票前と比較するとかなり低く、本原稿の執筆時点のGBP/USDは1.29ドルとなっています。

 GBP/EURを見ても、同じような数字を示しています。投票終了後の1ポンド=1.31ユーロから、本原稿の執筆時点では1.14ユーロにまで下がっています。2017年、この状況がどのように発展するかは不明です。ポンドがユーロと同等以下に下がると予測する人もいれば、ポンドが回復し、現状以上に上がると考える人もいます。

その他の記事も読む(英語版):Cash Forecasting: A Clear View of the Cash, T&R Special Report

 

為替変動による影響

 このように大きな為替変動が発生すれば、否応なしに多国籍企業に影響が及びます。投票が行われる前に、為替変動リスクを抑える対策をとっていた企業の場合は、すぐにこの影響を被ることは避けられたようです。しかし、この影響は短期間だったものの、一定期間ヘッジを行っていた企業は、現在、Brexitによる為替変動の影響を受けています。

 この他にも、財務はBrexitによる不確実性に直面しています。まず、英国がEUを離脱した後の銀行業の状況や既存の銀行との関係への影響について、見通しが立たないという点が挙げられます。また、外国銀行からの資金調達や海外投資への影響についても不透明です。

 Brexitがもたらす影響が不明確であるため、財務にとって、為替関連の状況を立て直すことがこれまで以上に重要になります。朗報なのは、これを実現する機会は豊富にあるということです。この数年間、財務が組織内で戦略的な役割を果たすケースが多くなり、現在の市場状況では、CFOや取締役会に貴重な助言を提供する機会も増えています。しかし、まず財務に求められるのは、リスクを明確に理解し、有害な事象やビジネスチャンスに迅速に対応できるようになることです。

 

問題点

 為替リスクのほか、金融リスクの管理では、財務は以下のようなさまざまな問題点に対処する必要があります:

 - 企業のエクスポージャーに対する可視化が不十分である。企業が直面しているリスクが十分に可視化されなければ、企業は適切な情報に基づいたヘッジ対策を意思決定できません。財務は、最適なプログラムを実施する前に、何をヘッジするのかを理解しなければなりません。つまり、信頼性の高い完全な情報源にアクセスする必要があるのです。

 - キャッシュフロー予測が不十分である。キャッシュが不足したために行き詰まるケースは多く、注文は順調に入っていても、こうした状況は起こり得ます。事業環境が不安定であり、収入に為替変動が影響を及ぼすことを考慮すると、企業のキャッシュフローを正確に予測できるかどうかが非常に重要になります。ただし、特に運営体制が複雑な企業の場合、予測を立てるのは非常に難しいのです。

 - M&A後の状況が十分に可視化できない。Deloitteによると、ヨーロッパと英国の間のM&A契約金額は、昨年の同時期と比較すると3倍になっているという調査結果が出ています。ただし、機が熟した時にすみやかにチャンスを活用できるように、企業は自らの流動性ポジションを明確に把握する必要があります。同時に、買収側の企業がターゲットの会計構造やプロセスを可視化できていない場合、M&Aが成立した後に問題が発生する可能性が高くなります。

 

テクノロジーによる問題解決

 こうした難しい状況において、リスクエクスポージャーを追跡し、最終的には効果的な意思決定を行えるようにすることによってリスクを管理する上では、テクノロジーが重要な手助けとなります。

 さまざまな方法で為替管理をサポートするため、現在の企業の銀行口座やキャッシュフローを明確に示すなど、高度なテクノロジーソリューションが導入されています。財務がこの分野を管理する対策を取った場合、存在すら知らなかった銀行口座に残高があるのを発見するのは珍しいことではありません。

 高度な財務管理システムがあれば、事実を一目で把握できるため、正確なキャッシュフロー予測をサポートし、財務は外貨建てのキャッシュフローをヘッジできるようになります。また、テクノロジーを活用することで、財務は企業のリスクエクスポージャーの詳細な報告をCFOに提出し、ヘッジのポリシーを現在の市場状況に合わせて調整することができます。クラウドベースのシステムなら世界中どこからでもアクセスできるので、必要な情報を集めて、情報に基づいた意思決定を行うことが可能です。

 財務管理システムを選択する場合、財務担当者は現在のニーズだけでなく、将来を考慮する必要があります。現代の企業にとって最も優先度が高いのはキャッシュフロー予測や流動性管理ですが、要求される内容は時間とともに変化することに注意しなければなりません。つまり、企業には支払、ヘッジ会計または為替管理機能をサポートするシステムが必要です。企業の将来的な要件を満たすだけでなく、必要なセキュリティレベルと統合レベルを提供できるシステムであることが求められるのです。

 

まとめ

 Brexit後の為替環境では、さまざまな課題が浮き彫りになっていますが、こうした難題を乗り越えるために企業はさまざまな対策を取ることができます。高度な財務管理システムを導入することで、財務は企業のリスクエクスポージャーやキャッシュフローを明確に把握することが可能になります。つまり、財務は市場の変化に対して迅速に対応することができ、M&Aのチャンスを活かし、より効果的なヘッジの判断ができるようになります。

メモ:本原稿は、企業財務専門家協会(ACT)の公式会報誌「The Treasurer」(2017年9月/10月号)にも掲載されています。

 

*本記事は2017年10月に公開された内容の翻訳となります。オリジナルはこちらからご覧ください。

 

 

コメントを追加