リスク管理の巧拙を左右するトレジャリー・ポリシーとテクノロジー

Tom Gavaghan
3月 21, 2017

*本ブログは2016年10月の英語記事を日本語訳したものになります

トレジャリー・ポリシーはどのように企業を守れるのでしょうか? キリバとアクチュアライズ・コンサルティング(Actualize Consulting)が「トレジャリー・ポリシーを機能させるテクノロジー」と題したウェブカンファレンスを共催し、トレジャリー・ポリシーのベストプラクティスについて解説しました。どんなに優れたトレジャリー・ポリシーでもITを使わないと、現場の末端までポリシーを浸透させることは難しいものです。キリバのトレジャリー・アドバイザー、ジャミ―・クリステルと、アクチュアライズ・コンサルティングのシニアコンサルタント、マーサ・グラントが、テクノロジーを使ってトレジャリー・ポリシーを運用することによって、トレジャリーの業務プロセスがどのように変わり、その結果がどのように変わってくるのか、対談します。

今日のトレジャラーはリスクや不確実性が日を追ってますます高まっていることを痛感しています。この不確実性の高まりを加速させているのは、新しい規制や、事業の地理的な拡張、そしてその地域における政治や経済、社会の変動、その他の事業の複雑性です。そのため、トレジャリーチームの職責が広く深くなるに従い、トレジャリー・ポリシーを現実に即したものに維持していくことがトレジャリーにとって本質的に重要なことになっています。

既存のトレジャリー・ポリシーを管理し、現実に合わせて常に更新しつづけるために、ITテクノロジーをもっと使うべきです。たとえば支払のワークフローをグルーバル全体で標準化しようとしたときに、従来のITソリューションでは難しくなかったでしょうか?

Playback recording: Leveraging technology to support your treasury policies

ここで「トレジャリー・ポリシー」と呼んでいるものは、公式に定義された、規程の最上位に属する文書で、特定のトレジャリー業務について、その実施方針、リスク許容方針、責任と権限、パートナー方針を最低限記述した文書のことです。

リスク許容方針: これは会社の事業の特性によって大きく変わりますし、会社の考え方や価値観、その他の様々な要素によって異なります。会社としてのリスク選好度、許容度についてはどの事業部門の担当者であっても理解していなければなりませんが、会社を倒産させないという使命に直接携わっている財務部門が全員必ず正しく理解していなければなりません。

責任と権限: 担当者個人の役割、責任、権限についてはポリシー及びその下位規程に明確に記述されていなければなりません。重要な作業タスクについては二重承認を前提にプロセス設計をする必要があるでしょう。

他部門との協業方針: トレジャラーは社内の他部門と協業することを避けて通れません。例えば、正確な資金予測を立てるためには事業部門との密なコミュニケーションは不可欠です。キャッシュコンバージョンサイクルを短縮して必要運転資本を減らすには、必然的に製造、在庫管理、販売の各部門との協業となります。これらの協業関係と、部門間連携にかかる各部門の責任もポリシーに明記されている必要があります。

Additional reading: How treasury technology supports business continuity planning

以下は、作成し運用する価値があると思われる重要な財務規程です。どの規程が最優先、最重要なのかは業態や会社規模等によって変わります。

1. 銀行口座管理規程

2. 借入管理規程

3. 支払規程

4. 短期運用規程

5. カウンターパーティリスク管理規程

6. 外国為替管理規程

7. 事業継続方針

8. 災害復旧方針

9. IT活用方針

10. グループ間取引規程

11. インハウスバンキング規程

セキュリティ: ITによって様々な方法でアプリケーションとデータのセキュリティを強化することができます。ファイヤーウォールを多層化したり、伝送中のデータや、ディスクに保存されているデータを暗号化したりすることで、非正規のユーザーからの不正アクセスを防止し、万が一データが漏えいしたとしてもそのデータが読めないようにすることができます。職責に応じてユーザー権限やデータアクセス権限を定義すると、貴社の業務分掌(セグリゲーション)に従った業務をワークフロー上で忠実に実行できます。

標準化されたワークフロー: グローバルで一つの標準化されたプロセスに統一することは、内部統制や規制対応の観点では非常に大切で有効なことです。一般に財務業務フローは、本社、子会社、孫会社それぞれで規定されていて、何パターンもあるのが普通です。システム化作業を通じて、これら既存の何パターンもある財務業務フローが文書化、可視化されます。それによって初めて、銀行口座管理から、財務取引の実行と決済までの業務フロー全体が網羅的に定義できます。

戦略的パートナー: ITを使って財務業務のプロセスを効率化し、レポーティングを自動化し、手作業を削減すると生産性は高まり、その浮いた時間で付加価値の高いアウトプットを出すことによって、トレジャリーチームは、企業の中でより戦略的な位置づけを高めることができます。具体的には最適資本構成を決めたり、マーケットや事業に関するリスク情報を事業部門に提供したり、取引先との関係を強化するサプライヤーファイナンス・プログラムを構築したり、その他示唆に富んだ分析結果を提供したりするなどの付加価値作業を行うことができます。

 

要するに、現在のグローバル・マーケットの状況を考えると、基本的な理念ともいえるトレジャリー・ポリシーは、万が一のために定めておいた方がよいというレベルのものではなく、定めておかねばならない性質のものです。遠隔地の海外拠点も正しくポリシーを理解して、ポリシーに従った業務を遂行することで、グループの資金が効率的に活用され、不正も行われず、結果として会社を守ることができるのです。会社の事業にとって本質的に大切なことは何かを見極めてはじめて、現行ポリシーのレビューをどこから始めたらよいか、その優先順位付けができます。そして、ITを使ってポリシーに従ったワークフローを実現し、全てのデータをセキュアな環境で集中管理することによって、グループ全体でポリシーを順守することができます。ポリシーを変更するときも速やかにプロセスを変え、常にトレジャリー・ポリシーが機能している状態を保ち続け、適切にリスクを管理することができるのです。