2019年にCFOはトレジャリーをいかにレバレッジするべきか

1月 21, 2019
Alex Wolff

 

  2018年が幕を閉じ新たな年が始まると、ほとんどのCFOが、好景気のもたらすさまざまな機会をCEOが活かせるようサポートしつつ、起こり得る景気減速や外国為替と金利のボラティリティの増大のリスクや、増加し続ける規制とコンプライアンスの負担から自社をバッファーする任務に追われることになるでしょう。そうなればCFOは必然的に、これら全ての要素の助けとなる実践的かつ戦略的なアドバイスを財務部門に求めるようになります。

 新しい年の訪れとともに起きるあらゆることに自社がうまく順応できるようにするため、CFOはトレジャリーをこれまでより巧みにレバレッジしなければなりません。そのためにはどうすればよいでしょうか?

 一部の専門家が予測するように、世界的な景気後退が本格化すれば、2019年の不確実性が高まることは必至です。世界の企業にとって好景気という宴はまだ終わったわけではありませんが、各種指標の数値は一部の客が宴の席からすでに去っていることを示しています。世界経済は2017年と2018年にそれぞれ3.1パーセントの成長率を記録しました。しかし世界銀行は、世界的なスラック(余剰資源)の消化や各国の中央銀行による金融政策の引き締めなどをはじめとする制約要因により、今後2年間は世界経済が減速すると予測しています。

 さらに米国と中国は貿易戦争の只中にあり、欧州のGDP成長は減速してきており、「ブリグジット(英国のEU離脱)」が経済にもたらす影響が未だに不透明な中で、イランなどの国々やロシアをはじめとする一部の国・地域の個人や企業に対する地政学的緊張の高まりや制裁の強化が進行しています。これらの状況は全て、世界経済の先行きが激動の展開になる可能性を示唆しています。

参考資料: 最高成長責任者としてのCFO

 

リスク管理、キャッシュ・マネジメント、運転資本の管理を改善する

 世界経済の見通しが不透明な中、企業のトレジャリー部門がもっと戦略的に動く必要があることは間違いないでしょう。実際に、キリバがCFOパブリッシング社と行ったアンケート調査「トレジャリー担当者がより戦略的になるべき3つの重要分野(英語)」の結果によって、CFOは自社のトレジャリー担当者に対し、リスク管理、キャッシュ・マネジメント、運転資本の管理の最適化にもっと注力して欲しいと望んでいることが判明しました。その理由は想像に難くありません。

                                                           

まずリスク管理を見てみましょう。アンケート回答者(計150名以上)中42.7パーセントが自社のトレジャリー部門について、事業目標の達成を今よりもっとうまく支援して欲しいと回答していました。その理由は、現代のCFOにとってのリスク管理の重要性を高めている二つのマクロトレンドに関連している可能性が高いと考えられます。

そのマクロトレンドの一つ目は地政学的緊張です。地政学的緊張があると、外国為替市場と商品市場にボラティリティが生じたり、貿易の流れが急変したりする可能性があります。このような可能性があるため、通貨と商品価格の変動による影響を緩和するためのヘッジ戦略を準備しておくことが企業によって一層重要になります。企業はまた、自社の取引量が減少した場合に備え、いかなる減少も相殺できる資金を確保するために金融市場にアクセスできる体制を整えておかねばなりません。不確実な世の中では企業にとって、自分たちが直面している金融及び経営リスクを完全な透明性を持って把握することが不可欠です。このような透明性は通常、世界中の銀行を広範かつシームレスに接続するテクノロジー・ソリューションにより実現できます。

二つ目のマクロトレンドはインフレの加速です。インフレが高進すれば、米国の例に倣って利上げを行う国が増える可能性があるでしょう。インフレの加速は今後も続くと見込まれます。資金調達にかかる費用は上昇し、企業の利ざやは縮小することになるでしょう。最終的にはインフレ圧力と厳しさを増す国際貿易環境が相まって、私たちが現在享受している良好な経済情勢が逆転する可能性もあります。そうなれば利用可能な流動性が制限され、企業収益が縮小し、外国為替ボラティリティが増大するという影響が生じ、より良いリスク管理の必要性がさらに高まるでしょう。

キャッシュ・マネジメントは改善が可能なもう一つの領域です。キリバが行ったアンケート調査において最も意外だった結果の中に、回答者(全員が北米のさまざまな業種の企業の財務担当上級管理職)の40%が自社のトレジャリー部門について、事業目標の達成をサポートするためにキャッシュ・マネジメントをもっと巧みに行う必要があると考えていたことがありました。キャッシュ・マネジメントはトレジャリーにおいて非常に重要な要素のひとつですから、このような結果が出たということは、一部の企業ではキャッシュ・マネジメントがその企業の事業目標と戦略的に合致していない可能性があります。それどころか、キャッシュ・マネジメントが、企業内で起きているその他のあらゆることと無関係に行われる「副活動」的に扱われているようなふしもあります。あるいはキャッシュ・マネジメント責任者側に、加速する今日の商取引のスピードについていく能力がないのかもしれません。今の世の中では、例えばCFOから買収を決定する際の根拠として資金繰り予測を求められたとすれば、必要な報告書を数日後ではなく、数時間以内に完成させる必要があるのです。

2019年には、CFOとトレジャリー担当者が自社のキャッシュ・マネジメントに戦略的な視点を取り入れる必要があります。さらに運転資金の可用性の最大化、投資対効果の最適化、不正リスクの低減を図るために、可能なあらゆる手段を講じねばなりません。

運転資金は常に重要です。キャッシュは企業の生命線。成長が鈍化し、大衆迎合、保護主義、不安定な市場の動きなどの様相を強めている社会状況においては、運転資金の重要性がより一層高まります。ですから、キリバのアンケート調査において回答者の39パーセントが、自社のトレジャリー部門は運転資金管理をもっと戦略的に行うべきだと考えていたことは当然と言えるでしょう。

正確なキャッシュ・フロー予測が運転資金管理を支える土台となります。そのため、最適な運転資金管理を望むCFOは、社内で行われる予測の質の強化に注力しなければなりません。この作業にはかなりの労力を払う必要がありそうです。なぜならアンケートでは、CFOの40パーセントがキャッシュの可視性と予測が信頼できないことを重大な懸念事項として挙げていたからです。

投資家の期待を管理するためには、キャッシュを可視化することが重要になります。2018年に大手企業数社が自社株を買い戻して株主に現金還元を行ったほか、企業合併や買収も多数実施されました。しかし世界中の大企業の貸借対照表には今も合計およそ1兆ドルの現金が入ったままになっていると試算されています。この事実は、自信を持って自社の現金準備高を引き出せるほどCFOたちが眼識を有していないことを示しています。

テクノロジーの力

グローバルな接続性と統合的ビジネス・インテリジェンスを備えた近代的なトレジャリー・マネジメント・ソリューション(TMS)を導入すれば、企業が経営に関する重要な決断を下す際に必要なキャッシュの可視性とデータの見える化が実現します。ところが、キリバのアンケート調査の結果によると、自社専用のTMSを使用している企業は全体のわずか60パーセントにすぎませんでした。CFOは、自社の財務部門内で何がテクノロジーの導入を妨げているのかを探る必要があります。

現在ある程度以上の規模を誇っている世界中の企業はそれぞれ、自社の流動性の使用状況を管理するためのシステムを備えていなければなりません。このようなシステムは、自動化された投資や、運転資金管理プログラムとびリスク・マネジメント・プログラムを通じて自社が保有するキャッシュを最大限に活用するための唯一の信頼できる情報源です。こうしたシステムは、複数の仮定のシナリオに基づいて会社のキャッシュポジションを分析するために必要なデータの見える化機能も有していなければなりません。エクスポージャーの流れと余剰キャッシュが明確になれば、CFOはトレジャリー部門から得た分析を、自信を持って事業の成長を推進するために使えるようになります。

絶対的な確信を持って未来を予測できる人はどこにもいません。世界銀行でさえ、そんなことはできないのです。世界経済の成長はこのまま継続するかもしれないし、予想以上のペースで減速するかもしれません。このような不確実性がある中で、CFOにできるのは複数のシナリオを想定して計画を立てることだけです。CFOは2019年に何としても、戦略的に重要な決定を下す作業をリアルタイムでサポートする最新のテクノロジーを導入してトレジャリー部門を強化することを検討するべきでしょう。トレジャリー部門の最も重要な機能がバックオフィス業務とみなされていたり、他の部門と無関係の独立した部門として扱われているような企業は、現在進行している貿易情勢を巧みに乗り切り、現在の世界で急速に起きているさまざまな変化の中で成功を手にするための準備ができていません。

 

本記事は『トレジャリーとリスク: 2019年にCFOはトレジャリーをいかにレバレッジするべきか(英語)』に掲載されたものです。