第四回:付加価値を生むこれからの財務業務:シリーズ「財務のデジタル化が企業にもたらすもの ~見る・守る・減らす・増やす~」

6月 7, 2019
伊藤 康博

これまで「財務におけるデジタル化が企業にもたらすもの」というテーマについて「見る」、「守る」、「減らす」という観点で3回に渡りブログ投稿してきました。今回最終回のテーマは「増やす」という点について言及してみたいと思います。

■財務における「増やす」とは?

「増やす」というのは前向きな言葉ですよね。「増える」は客観的な事象を表す言葉ですが、「増やす」は能動的な言葉です。では、財務部門が能動的に「増やす」ものとは一体何でしょうか?私は「利益」、「信用力」、そして「考える時間」の3つを挙げたいと思います。では、この3つの「増やす」についてもう少し具体的に考えてみましょう。

■「利益」を増やす

会社組織上、利益を増やす部門はやはり事業部門になりますが、財務部門も管理部門でありながら利益を生み出す部門であると言えます。資金調達において金融機関からより良い条件を引出すのは財務部門の役割の一つなので、利益を増やすことに間接的に貢献していると言えるでしょう。取引する金融機関が多ければ多いほどそれだけ交渉に労力を要しますから、財務部門は営業機能を持ち合わせた組織と言えるのではないでしょうか。当然ですが、利益は「売上」-「費用」で算出するので、利益を増やすためには「売上」を伸ばすか、「費用」を削減するかのいずれかしかありません。財務部門はこの「費用」の削減において大いに貢献することができる部門と言えると思います。例えば、有利子負債の圧縮による支払利息の削減、ネッティング決済による銀行手数料削減、プーリングによる資金調達費用の削減等、TMS(Treasury Management System)を活用することで「費用」を削減し利益を「増やす」ことに貢献することができます。同額の利益を売上増で賄うには大変な営業努力を要するかと思いますが、TMSの活用は費用を削減することのみならず、業務効率化にも効果があるので間接的に利益を増やしてくれると考えます。実際にTMSを活用することで利益創出に直結した成果を生んでいる企業様も居らっしゃいます。財務部門のデジタルトランスフォーメーションの姿の一端として、これまでの報告中心の業務から利益を増やすことにも貢献できる組織としての姿があるのではないかと考えています。

■「信用力」を増やす

信用力は増やすというよりは、上げる或いは高めると言った方が日本語として適切だと思いますが、今回は「増やす」がテーマなので若干の違和感がありますがご容赦下さい。そもそも銀行が資金を貸出す条件は企業の信用力、成長性に依存するので、財務部門としても信用力を増やすための貢献が求められると思います。では、具体的に信用力を増やすために財務部門としてできることは何でしょうか?企業の信用力を示す重要な要素として財務の健全性があげられますので、財務部門は財務の健全性に影響を及ぼす可能性のある事象に対して日頃から目を凝らしておくことが必要だと思います。自己資本比率やD/Eレシオといった財務の健全性を表す指標のチェックと並行して、グループ全体での余剰資金や有利子負債の有無についての状況をリアルタイムにチェックし、資金を最適に集中・配分できる仕組みを構築しておけば、自ずと財務の健全性が向上し、結果信用力を「増やす」ことに繋がると考えます。財務の健全性だけが信用力ではありませんが、金融機関との交渉をより有利に働かせるためにも必要なことであると思います。

■「考える時間」を増やす

最後の増やすは財務部門の皆様の「考える時間」です。財務部門の業務環境はシステム化対応が進んでおらず、Excelを中心とした手動業務に忙殺されているというお話を聞く機会が多くあります。例えば、銀行口座残高の集計、資金繰り報告、金融資産・負債の管理、支払処理、為替管理および会計仕訳の計上といった業務のすべて、又は部分的に手動で対応されています。このような日常業務はTMSを活用することで殆どの業務が自動化・効率化されますので、これまで費やしていた時間の大部分が削減され、グループファイナンスの仕組み作りや銀行政策、資本政策といった将来の財務業務について「考える時間」を増やすことが可能となります。

■最後に

財務のデジタルトランスフォーメーション「増やす」というテーマについて書いてきましたが、財務部門は業績に影響を与える金融機関との交渉、経営戦略と表裏一体の財務戦略の推進、グループ会社に対する財務業務の啓蒙等、非常に幅広いミッションを背負った部署であります。財務部門の方々がデジタルトランスフォーメーションを実現することで、日常業務から解放され真の付加価値の高い業務に注力できるように我々もお手伝いしていきたいと思っています。

伊藤康博 (Ito Yasuhiro)
キリバ・ジャパン株式会社  シニア ソリューション エンジニア
一般事業会社の経理部門で営業/本社経理を5年間担当。その後、外資系ERPベンダーに転職し19年間会計領域を中心としたプリセールスを担当。2019年よりキリバ・ジャパンのプリセールス・チームに参画し、財務管理ソリューションの提案活動に従事