TMSとRPAの連携による財務業務高度化のベストプラクティス

11月 28, 2018
長瀬 大

これまで財務業務はエクセルとマニュアルオペレーションが頼りでしたが、近年クラウド型のトレジャリー・マネジメント・システム(TMS)が市民権を得つつあります。そのTMSを上回るペースで利用が進んでいるのがロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)です。マニュアルオペーションをシステム化・自動化するという点でTMSとRPAの役割は重なっていますが、RPAはそのわかりやすさから支持を得ています。ではRPAがあればTMSは不要なのでしょうか? もちろんそうではありません。両者はそれぞれ利点と欠点があり、補完関係にあります。導入効果を最大化する上では、両者の違いを正しく理解することが極めて重要です。

本記事では、TMSとRPAの連携による財務業務高度化のベストプラクティスを紹介します。

 

1.TMSとRPAの概要

TMSは財務業務に特化したソリューションであり、資金効率の最大化、生産性の向上、ガバナンスの強化を実現します。TMS導入後は、TMSを中心として財務業務が実行されるようになります。従って、多かれ少なかれ業務プロセスの変更を伴います

RPAは業務横断的に利用できる、自動化のためのソリューションです。レポートの作成など、マニュアルで実施しているほとんど全ての作業を自動化することが可能です。また、あくまでも現在のマニュアル作業の置き換えであるため、業務プロセスを変更する必要はありません。

この比較だけ見ると、RPAの方が導入のハードルも低く、TMSを導入する必要がないように思えるかもしれません。でも、それは事実ではありません。

 

2.RPAの限界

RPAには決定的な制約があります。それはRPAの最大のメリットである「業務プロセスを変更せずに済む」という点にあります。業務プロセスを変更せずに済むことは、導入のハードルを下げる一方で、導入の効果を限定する要因となります。

例えば、伊予銀行では、RPAによる既存プロセスを前提とした自動化ではなく、業務をゼロベースで組み立てる方法を選択したそうです。その理由は、RPAによる効率化効果が10〜20%に留まるのに対して、ゼロベースでの組み立てでは70%〜90%に達すると試算したことにあります。

 

参考:伊予銀行が、RPAではなく業務を再構築してチャットボットを導入したわけ

 

では、TMSはどうでしょうか。TMSの導入は、確かに変化の痛みを伴う場合がありますが、その分大きな効果を得ることができます。また、RPAのデメリットとして指摘される、業務のブラックボックス化、野良ボットによるガバナンスの低下や変化への対応能力の低下といった問題もありません。

一方、TMSは柔軟性という意味では制約があります。これまでエクセルの機能を駆使してマニュアルで作成していた複雑レポートをTMSの標準機能で出力することは多くの場合不可能です。

 

3.TMS + RPA=財務業務の高度化

つまり、最適解は両者の組み合わせにあります。それもTMSを主として、RPAを補完的に使うことがベストです。具体的には、次のようなユースケースが考えられます。

  • 銀行明細データはTMSで取得し、RPAでレポートの加工を行う
  • TMSで自動取得できない口座(国内外貨口座など)のみをRPAで取得し、TMSにアップロードする
  • 為替取引の管理はTMSで行うが、社内為替レートのTMSへのアップロードをRPAで行う

一方でこのアプローチには1つ問題があります。それはRPAの適用範囲が限定されるため、費用対効果が成立しづらくなることです。では、どのように検討をすれば良いでしょうか。

 

4.RPA導入の実験台に名乗りを挙げる

お勧めはRPA導入の実験台に財務部門として名乗りを挙げることです。

多くの会社においてRPA導入は、IT部門が主体となり、全社的な取り組みとして企画されます。つまり、費用対効果は全社的に計算されます。それにより、財務領域単体では成立しない費用対効果が成立するようになります。

実際、弊社のお客様の中には、そのようなアプローチでRPAを導入し、TMSを補完して、より大きな財務高度化を実現しています。

 

5.まとめ

時間管理のコツを示すアナロジーに「バケツに石を入れる」アナロジーがあります。まず大きな石を詰め、その後に小さい石や砂を詰めることで、バケツに入る量を最大化できるという内容です。つまり入れる順番が重要です。

TMSとRPAの関係においては、TMSが大きな石で、RPAが小さな石に対応します。まずTMS導入による業務プロセスの変更も含めた大きな改善を図り、それでも残ってしまうギャップをRPAで埋める。これこそが財務業務の導入効果を最大化するためのベストプラクティスです。

エクセル頼りだった時代と異なり、現在はTMSとRPAという強力な武器が存在します。是非、TMSとRPAの組み合わせによる財務業務の高度化についてご検討ください。

 

キリバ・ジャパン株式会社 プリセールスコンサルタント 長瀬 大

 

FinTech業界において10年以上の経験を有する。前職では銀行・証券会社を主な顧客とする数多くの金融取引システムの提案・導入に従事。FISC基準を満たす高セキュリティのシステム設計などを担当。2015年よりキリバ・ジャパンに所属。プリセースルコンサルタントとして、クラウド型財務ソリューションに関する提案・製品デモンストレーション・セミナー講演に従事している。情報セキュリティスペシャリスト。