【イベントレポート】AFP 2018 シカゴ大会に参加して

11月 15, 2018
大田 研一

 

今年の11月4日から7日まで4日間にわたりシカゴで開催された米国の財務プロフェッショナル協会(AFP:Association for Financial Professionals)のコンベンションに参加したので感想を述べたいと思います。

 

 読者の皆様には、AFPとは何かから始める必要があるかもしれません。AFPは、日本CFO協会が発足するときにAFPの米国キャッシュマネジヤ―の資格試験(CCM: Certified Cash Manager)を日本語化しての導入にあたった際に、筆者も米国での勤務経験や米国駐在中にAFPのコンベンションに何度も参加した経験があり、日本語化するときに問題の選択やセミナー講師などでお手伝いしてきました。それが日本CFO協会主任研究委員となりました。

 

 さて、このコンベンションにどれくらいの人が参加すると思いますか。恐らく500人、あるいは1000人を想像されたのではないかと思いますが、今年は7000人が参加し、毎年記録を更新しています。私が最初に参加した30年くらい前には1000人を超えるくらいだったと思いますが、それから比べると隔世の感です。大会のプログラムカタログから引用すると、100以上の教育セッション、240社の展示ブースからいかに大きな大会か分かると思います。そのため開催はそれ相当の大きさの会場に限定されます。昨年は、サンディエゴで来年はボストンが予定されていますが、いずれも大型のコンベンションセンターで知られる都市です。

 

 それでは、なぜこれだけの人材が集まるかと言えば財務関連の市場を構成する個人及び企業が一堂に会することで、市場で何が起きているか、何が起こるのかの気づきを得られるのと、意見交換できる相手を見つけるネットワーキング構築に効率の良い最適な場だからです。参加費用は20万円を超えるので決して安くはありませんが、会社で何らかの課題を抱えるプロフェッショナルが上記の目的を達成できるのならお安いものです。会社負担がほとんどで、参加できるかどうかで、会社での評価が見えるものです。興味深いのは、今年は過去の大会にどれだけ参加したかを示すパネルがあって、参加者が自分は何回参加したとお互い参加回数で競争心をあおっていたのも米国らしいと思います。

 

 今年のセッションテーマで目立っていたのは、送金関係(Payment Hub)とサイバー攻撃対策(Cyber Security)です。欧州や香港ではreal timeおよび24時間の送金が始まり、海外からのプレッシャーもあり米国でも急速にその対応を進めてきたようです。筆者が80年代90年代に財務業務を担当していた当時はビジネスでの商流の送金・決済は小切手によるものが100%に近い状況でしたが、今では50%に低下しています。EFT(Electric Funds Transfer)、ACH(Automated Clearing House),Credit Card。Wires 等多様な決済が増加しています。こうした背景から多様なPaymentに対応するシステムやソリューションの開発を済ませた支払管理(Payables)のサービスを提供するフィンテックベンダーが登場していました。

 

 日本と米国の違いで感じるのは、こうした新興の企業の提供するサービスもユーザーに受け入れられることが、新規参入を促していると思います。財務プロフェッショナルがリスクを取って新しいソリューションに取り組む文化があると感じています。名前も知らない新興企業が多数参加している一方で、すでにブランドを確立したキリバに代表されるSaaS型のクラウドサービスはまだ25%くらいで、まだまだ米国企業の財務では従来のオンプレミス型のトレジャリーマネジメントが40%超を占めています。この背景には、日本で筆者は財務プロフェッショナルが育たない背景として経理出身のCFOが人材教育とシステム投資に慎重な姿勢が欧米企業に遅れた原因との仮説を持っていますが、米国でもSaaS型のTMSへの移行に時間がかかっているのは、基本的に慎重なDNAを持つCPA出身のCFOが米国でも多く、変化を嫌う傾向があるとの話を聞いて納得させられました。

 

 Cyber Securityについては、すでに相当の企業が被害にあっており無視できないことから関心が高まっており、TMSについてもそうした対策が組み込まれているかに興味を持つ企業が増えている。特に、サプライチェーン全体に影響が出て船積された製品が荷揚げされず製造に大きなダメージがあったケースなどは、身代金を要求する単純なものから高度な攻撃も見られる状況になっている。

 

 AFPのコンベンションに来て感じるのは、30年前も今も日本人の姿が見られないことです。日本からの参加は難しくとも、米国現地法人の財務責任者の参加はあっても良いのではないかといつも思わされる。特に、フィンテックの登場に代表されるデジタル時代の財務のイメージは今までの常識では想像できないものになっている。今年の新しい財務の取り組み企業に与えられるPinnacle AwardがUberのドライバーに対するクレジットカードの即時決済の取り組みが受賞したが、伝統的なカード決済を大きく転換した新しいビジネスモデルの推進企業には改めて驚かされた。10,000ドルの賞金を寄付する太っ腹にも感心させられました。

 

 締めのゲストスピーチは2度のスーパーボールでMVPに輝いたPeyton Manningが登壇しユーモアのあるプレゼンテーションで沸かせました。アメリカン・フットボールのフアンが多い参加者をつなぎとめる手法は相変わらずでした。来年のボストンでは多くの日本人の財務プロフェッショナルに会えるのを期待しています。

 

大田 研一様 日本CFO協会 主任研究委員

1971年に一橋大学社会学部卒業後、日本電気(株)に入社。米国CMSの構築、金融子会社設立の企画及び実行責任者を務める。その後、投資銀行マネージング・ディレクター、ベンチャー企業CFO、戦略コンサルティング会社ディレクター、財務研修講師、山口大学専門職大学院(MOT)教授、社外監査役(上場企業2社)、(株)アコーディア・ゴルフ取締役常務執行役員(CFO)などを歴任。