効率化は必要条件であって目的(ゴール)ではありません

2月 12, 2020
屋形 俊哉

 「効率化だけではわくわくしない。」

これはあるお客様の役員の方のコメントです。部下からシステム投資など上申があり、投資の目的に「効率化」とある。現場が限られた人員で日々忙しいという状況は理解している。だからといって目的が効率化だけじゃおもしろくない。もっと何か期待させるものも欲しい。

 キリバ社内の営業のコールメモや週報などでも、お客様のトレジャリーマネジメントシステム(以下、TMS)検討の目的が「効率化」という商談をたびたび目にします。しかし、何か課題を感じていて、それを解決するために効率化が必要なのであって、効率化自体は目的ではないはずです。

 経営目標の達成に財務部門として貢献するために新たな取組み(例.資金繰り予測の範囲を本体だけでなく連結ベースにすることや資金繰り予測のサイクルを月次から週次にする等)が必要で、そのために効率化が必要といった「攻め」の目的や、事業の拡大やリスクの増大に今の人員で対応するためには業務を効率化しないと、会社(業績)や個人(心身)に大きな損害を与えかねないといった「守り」の目的が必ずあり、その目的を達成するために効率化とTMSという道具が必要なのです。

 この一文を読んで、そんなこと当たり前ではないかと感じる方も多いと思いますが、意外と多くのお客様が効率化を目的にされ、我々もその言葉をそのまま受け取り、目的の明確化が不十分なまま工数削減などの効果算定をお手伝いしたりして、いざ上申プロセスを進めると冒頭のコメントのような返り討ちに遭ったりしてきました。

 同様に「標準化」も目的ではありません。アウトプットのスピードや精度を上げるために、財務業務のPMIを円滑に進めるために、BCPの観点から属人性のリスクを排除するために、など、ここにも標準化が必要な様々な目的があるはずです。

 TMSの投資目的でもうひとつ気になっていることがあります。それは「働き方改革」に言及されるお客様がほとんどいないということです。

 多くの企業が中計経営計画などの経営方針のひとつに「働き方改革」を上げ、果たすべきこととして「生産性の向上」や「やりがい」といった言葉があります。であれば、財務部門としてこの経営方針に応える形で、TMS導入検討の目的に「働き方改革」を堂々と謳った方がよいのではないでしょうか。

 財務業務における「生産性の向上」とはどんなものか。何となくイメージできると思います。効率化や標準化にもつながりやすい言葉です。もちろん投資対効果という点では生産性の向上による経営や従業員への効果が重要なのは言う間でもありません。生産性の向上もそれ自体は目的ではありません。

 では、財務業務における「やりがい」とは、それを投資対効果という点でどう測る(見える化)するのか。何によってやりがいを感じるのか、どういうときにやりがいを感じるのか、人によって様々ですが、一般的には付加価値の高いといわれる業務の方がやりがいを感じることが多いと考えられているように思います。

 経理財務に求められる役割の変化として、以前から以下のような4象限の図を使って表現する方法があります。 

 各象限にどんな言葉が入るかは時代や人(執筆者)によって微妙な違いはありますが、多くの場合、左下はスコアキーパーで、右上がビジネスパートナーやバリューインテグラーといった言葉で表現されています。この4象限のデザインを自社に合う形にアレンジして、各ブロックの構成人員の変化を財務部門という組織の付加価値の増加を測る方法としてひとつ考えられるのではないでしょうか。もちろん構成人員の変化の内容が納得感を持って受け入れられるものでないと意味がないですが、あくまで目に見えやすい計測方法、表現方法のひとつとして、TMS導入の上申のためというよりは、自社のこれからの財務部門の方向性をわかりやすく社内に共有するという目的で作ってみるといいかもしれません。

 キリバ・ジャパンは財務業務の高度化による日本企業の国際力の強化をミッションにしています。そのミッションが企業だけでなく、財務業務に携わる人たちの「やりがい」の向上にも貢献できれば、とても喜ばしいことです。そのことが自分のキリバでの仕事の「やりがい」です。お客様と自分の「やりがい」を増やせるよう、精進したいと思います。

屋形 俊哉 (Yakata Toshiya) 
キリバ・ジャパン株式会社 プリンシパル コンサルタント
 
大学を卒業後、大手電機メーカーの経理/財務部門で事業部門担当の経理(原価管理、予算管理、等)や
子会社への出向を経た後、本社でグループ会社向けの標準会計システムの開発や導入支援に携わる。
2000年にSAPジャパンに転職、以後15年半、会計プリセールスとして製造業を中心に数多くの日本企業への
ERP会計及び関連ソリューションの提案活動に従事。その後、しばらくIT業界から距離を置き、
2018年4月にキリバジャパンに入社、今度は経理ではなく財務部門の業務改革
(もっとシンプルに、もっと柔軟に、もっとワクワクしたものに)をお手伝いすべく活動を再開。
 
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