Why Kyriba for me -ERPベンダーに長くいた自分がKyribaにいる理由-

8月 8, 2018
屋形 俊哉

 

■やり残したもの?

 

 私は大手電機メーカーの経理・財務部門で12年半、ERPベンダーの会計領域のプリセールスとして15年半働いた後、しばらくIT業界から離れていたのですが、現在はトレジャリー領域のソリューションベンダーであるキリバジャパンで再びプリセールスとして働いています。(末尾プロフィール参照)

 ERPベンダーにいた15年半の間に日本企業では急速にERPが広まりましたが、少なくとも私が担当していた製造業のお客様では、ほとんどのERPプロジェクトで会計領域は導入対象となるのに対し、トレジャリーの領域が導入対象となるプロジェクトは希でした。

 日本においてTMSの取り組みが欧米と比べて進んでいない理由として日本企業は長くPL中心の経営でキャッシュマネジメントに対する認識が欧米に比べて甘い(弱い)といったことがよく言われますが、そういったお客様側の事情だけではなく、ERPベンダーやERPの導入パートナーも欧米企業のERPプロジェクトではトレジャリーも当たり前のようにスコープ内で、企業経営上もトレジャリーが重要であることを知っていたにも関わらず、お客様が要求する範囲以上に無理に提案はせず、トレジャリーをスコープアウトの第一候補扱いをしていたこともTMSが広まらなかった要因のひとつだったのではないかと、今は思います。

そして現在もトレジャリーの領域は一部業務には銀行のCMSサービスが広がりながらも、まだまだExcel中心のお客様が多くいらっしゃいます。

 ERPベンダーを辞めたとき、「これで日経新聞を読まなくてすむ」と思った自分が、またこちらの世界に戻ってきたのは、何かやり残したような感覚もあったのかもしれません。

 

■現場復帰のキーワード 「直接部門・戦略部門としての財務」 と 「クラウド型TMSの即効性」

 キリバで仕事を始めることを具体的に考え始めたとき、暫く離れていたIT業界へ戻って生活環境を変えることに多少の不安やためらいもありながら、経理と財務の違いとか、これまでのオンプレミス中心だったERPとクラウド型のTMSの違いとかに思いを巡らす中で「直接部門・戦略部門としての財務」と「クラウド型TMSの即効性」の2つのポイントが、現場に復帰することを後押ししたと思います。

 

「直接部門・戦略部門としての財務」

 ERPベンダーで会計領域の提案をしていた頃、お客様のビジネスや検討範囲に応じた導入効果をいろいろ考えましたが、ERP会計で経理の業務が変わったとしても、そのどれもが定性的な効果でした(※)。決算の早期化、経営情報のスピード化、業務の標準化、内部統制の強化、など、どれも企業にとって重要なことですが、直接にPLやBSを改善するものではありません。

※業務効率化を定量効果的に表現することはあっても、日本企業の場合、効率化されたからといって実際に人を削減することはないので、PLにインパクトを与えるような効果とはいえません。

 しかし、財務は違います。有利子負債削減、金融収支改善、銀行手数料削減など、財務の業務は直接にBSやPLにインパクトを与えることができます。

また、経理部門が会計情報(財務会計・管理会計)を使って様々な分析を行い、経営層の意思決定や事業ラインの戦略策定にいかに有効な情報提供をしたとしても、とても重要な役割ではありますが「主役」ではありません。

 しかし、財務部門は違います。「経理戦略」という言葉を耳にすることはありませんが、「財務戦略」は一般用語です。例えば、日本総研のグループ財務戦略のサービスメニューには「企業価値向上のためには単に経営戦略や事業戦略を遂行するだけでなく、戦略実現に必要な財務機能を保持した強力な財務部門を確立し、財務施策を立案・実行することによって資本構成の最適化を実現する必要がある」といった趣旨の記述があります。

 財務部門には間接的な業務ももちろんあり、間接部門として扱われることが多いですが、直接部門的なところもあり、そして財務戦略においての主役は財務部門です。

ERPベンダーで会計を提案していた頃にはこんなことまで考えが及んでなかったのですが、改めて財務部門の業務を考えたとき、直接にBSやPLを良くしたり、財務戦略を実行するプロセスを改善(改革)するその可能性に期待感というか、何かわくわくするものを感じました。

 

「クラウド型TMSの即効性」

 グループの会計システムを標準化するのは言うまでもなくとても大変です。企業内のいろんな業務、いろんなシステムのデータが会計システムに集約されるので、関係する組織や関係するシステムは多種多様で、会社間、部門間、システム間の調整だけでも莫大な時間と労力を要し、システムを構築し展開するリソースも必要です。しかも、会計システムの効果は定性的で間接的なものなので、プロジェクトが始まってからその成果を享受できるようになるには長い長い時間がかかります。

 TMSのプロジェクトはそんなグループ会計のプロジェクトに比べると関係者は多くなく、システム化のスコープによってはすぐにBSやPLにインパクト与える効果を得られる可能性があり、しかも、今はクラウド(SaaS)というシステム・サービスの形態によってシステムを構築する時間も大幅に短縮されています。

「提案活動を始めてから、そのお客様が成果を得るところまでを見届ける」という当たり前の営業活動のように思えることが、少なくとも自分のERPベンダーの15年半の経験の中では、プロジェクトの長さに加えて外資系ITベンダーの人材の流動性の高さもあって実はそんな当たり前のことではなかったのですが、「クラウド型のTMSだと早い時期にお客様にその成果を感じてもらえる」、そんな期待感がありました。

 

 キリバ社には私の他にもERPベンダーに在籍していた者がいますが、その中のあるシニアな営業と会話したときに、「キリバで仕事を始める」ということに対して同じような期待=お客様に早く成果を感じていただけるかもしれない」と同じことを言っていたのが印象的でした。

 

■競合というより役割分担

 

 前職のERPベンダーもTMSに関わるソリューションを持っています。それぞれに強みや特徴があり、キリバのソリューション(製品・サービス)が合っている企業もあれば、ERPベンダーのソリューションが合っている企業があります。

 

では、どんな企業にキリバが合っているのか、主なポイントは3つ。

・早く始めたい

・初期投資はなるべく抑えたい

・社内のIT部門のリソースに新たに財務領域に着手する余裕がない

 

 これは自分がERPベンダーに対して競合という感覚を持たない理由とも重なります。

企業の中には競争力のある製品やサービスを生み出すプロセスや組織があり、そのために必要な資金の準備とリスクのコントロールというプロセスや組織や業務がある中で、投資の優先順位はどうしても前者が高くなりがちです。

前職のERPベンダーのサイトやプレスの発表内容を見ても、前者にどんどん画期的なソリューションをリリースしたり提案したりしているように見えます。世の中を変えるくらいの勢いすら感じます。そして、多くのERPのお客様においては、それを実現する上で重要な役割を持つ新しいERPへのバージョンアップ(従来テクノロジーでのERPの保守切れ)という大きなテーマも存在しています。

 しかし、グローバルに事業を展開する日本企業においてグローバルでの資金の可視化や効率化、財務に係る様々なリスクのコントロールは、もはや看過できない喫緊のテーマになっているのも事実です。

そこでグローバルTMSの構築や運用はキリバのSaaSを利用し、社内の限りあるリソースはERPの強化や革新的なプロセスの構築に注力するという「キリバとERPベンダーとの役割分担」が、お客様にとっては効率的で効果的なIT投資を実現する現実的な組み合わせとなるのです(別ブログ記事「フロントERPとしてのKyriba」もご参照下さい)。

 

■今度こそ

 経理には「決算」や「連結会計」という強制力があって、デジタル化への投資の恩恵を早くから受けて「グループ/グローバル会計システム」という名の戦う武器が与えられ、SOXやIFRSなどの外圧でさらに洗練(追加投資)されてきたのに対し、財務はそうした強制力や外圧もないためデジタル化の投資恩恵が受けられず、あたかも「こん棒」だけで戦いに臨んでいるような状況です。

過去にTMSの導入を検討したものの投資規模の大きさなどの理由で断念したお客様も多くいらっしゃると思いますが、今はグループの財務業務を改善(改革)したいという強い意志とインターネットにつながるPCさえあればプロジェクトを始めることができます。はじめから大きな財布を用意する必要はありません。

戦場はグローバルに広がり、戦う相手(対処すべき課題)の数も強さも増すばかりです。

 

さあ、始めましょう、今度こそ。

 

屋形 俊哉 (Yakata Toshiya) 

キリバ・ジャパン株式会社 プリンシパル コンサルタント

大学を卒業後、大手電機メーカーの経理/財務部門で事業部門担当の経理(原価管理、予算管理、等)や子会社への出向を経た後、本社でグループ会社向けの標準会計システムの開発や導入支援に携わる。2000年にSAPジャパンに転職、以後15年半、会計プリセールスとして製造業を中心に数多くの日本企業へのERP会計及び関連ソリューションの提案活動に従事。その後、しばらくIT業界から距離を置き、2018年4月にキリバジャパンに入社、今度は経理ではなく財務部門の業務改革(もっとシンプルに、もっと柔軟に、もっとワクワクしたものに)をお手伝いすべく活動を再開。