財務業務のアフターデジタル

By 屋形 俊哉 2021年5月10日

「アフターデジタル」という本(※1)を読んで

前回のブログ(※2)と同様、今回も本の話から始まります。

この本は2019年に出版され、昨年7月にはすでに続編が出版されている本で、日経ビジネスの書評で初めて知り、デジタルトランスフォーメーションの世界のトップランナーの現状やアプローチの事例に興味を持って購入しました。
自分がビジネス系の本を手にするとき、何か財務業務に関連するような、財務業務の高度化に流用できるようなポイントがないか考えながら読むことが多いのですが、本のタイトルにもなっている「アフターデジタル」の世界は、これを企業財務に当てはめると、キリバが提唱するアクティブリクイディティネットワークは、まさに財務業務のアフターデジタルの世界だと思いました。

この本では“ビフォアデジタル”は、「オフラインのリアル世界が中心で、付加価値的な存在として新たなデジタル領域が広がっている」という図式であり、アフターデジタルの社会では、人は常時デジタル環境に接続している状態にあり、人々の行動はデジタル環境を通じて行われ、リアルな場所はリアルな世界でしか得られない価値を生むためのレアな接点(人と人との接点)として位置づけられています。

これを財務業務に当てはめると、ビフォアデジタルの図式は紙やExcel中心のアナログな業務プロセスが中心で、付加価値的な存在として銀行CMSやトレーディングプラットフォームといったサービスの利用やRPAといった自動化ツールをポイントポイントで利用するという、多くの企業の財務部門の現状に合致します。そして、アフターデジタルの「常時デジタル環境に接続している状態」はアクティブリクイディティネットワーク(下図参照)のことを指し、財務業務はアクティブリクイディティプラットフォームを通じて行われ、リアルな世界でしか得られない価値とは、財務部門の“人”によって創造される、人にしか生み出せない付加価値であると考えられます。


※1 アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る
※2「企業不正の調査報告書を読む」という本を読んで

 

アフターデジタル世界での財務の貢献

アフターデジタルの財務の世界では、グループ全体のグローバル・キャッシュの動きをリアルタイムに把握することができます。財務部門の人は数字を作る・報告する“作業”から解放され、数字を活かす業務に注力できます。

その結果、ビジネスパートナーとしての役割を強化したり、キャッシュやリスクマネジメントのプロフェッショナルとしての機能を強化したり、そのために必要なスキル向上に時間を割いたりと、これまで財務部門に期待されながらも、現状業務に追われて十分に応えることができていなかった役割・業務において、大きな成果を上げることができるでしょう。

そして、キャッシュの動きやリスクに関する情報が、グローバルでリアルタイムに把握され、蓄積される、その膨大なデータに、今までの財務業務の枠を超えた新たな価値が生まれる可能性も考えられます。

例えば、小松製作所のKOMTRAX(コムトラックス)という仕組みは、IoTの成功事例として有名ですが、この仕組みは保守ビジネスの効率化とサービスの向上を狙って導入されたもので、それが世界中のコマツの建機の稼働状況をリアルタイムに把握できるようになった結果、今や世界の経済動向を読む指標のひとつとして広く認知され、事業戦略を立案する上での重要なデータに位置づけられています。

 

■テクノロジーは笑顔を増やして自己実現を加速する

これは、グーグルやリクルート、楽天といったデジタルとの関わりが深い会社で、新規事業や事業開発を歴任してきた本書の共同著者が信じていることだそうです。私も、Excelワークが中心の今の財務部門の人たちがもっとテクノロジーを活用することで、業務の付加価値だけでなく、その人自身の価値(人財価値)も向上すると信じています。

私は前職のERPベンダーや前々職の事業会社では財務よりも経理/会計の経験が中心で、長く会計領域へのデジタル投資に関わってきました。企業規模によりますが、会計システムの刷新やERPの導入は数千万から十数億円の大きな投資です。少し極端な言い方をすれば、法規制の縛りがあるとはいえ、直接的にはお金を稼がない「会計」という業務領域なのに、企業はこれほどの投資をしてきました。

一方、財務部門の人たちは、これまで自部門への投資にお金を使った経験がない(あっても大きな金額ではない)方が多いせいか、思い切ったデジタルソリューションの活用に消極的というか、遠慮しているように見えます。

たしかに財務業務の高度化のための投資は自部門の業務への投資ですが、会社を強くするための投資でもあります。そして、人財価値の向上は企業価値を最大化させる上での重要な要素です。

会社よし(強い会社)、人よし(財務の人材価値の向上)、株主よし(企業価値の向上)の三方よしの財務業務のアフターデジタルに向けて、ぜひ一歩を踏み出してください。キリバが全力でお手伝いさせていただきます。

 


屋形 俊哉 (Yakata Toshiya)
キリバ・ジャパン株式会社 プリンシパル コンサルタント

大学を卒業後、大手電機メーカーの経理/財務部門で事業部門担当の経理(原価管理、予算管理、等)や子会社への出向を経た後、本社でグループ会社向けの標準会計システムの開発や導入支援に携わる。
2000年にSAPジャパンに転職、以後15年半、会計プリセールスとして製造業を中心に数多くの日本企業へのERP会計及び関連ソリューションの提案活動に従事。その後、しばらくIT業界から距離を置き、2018年4月にキリバジャパンに入社、今度は経理ではなく財務部門の業務改革(もっとシンプルに、もっと柔軟に、もっとワクワクしたものに)をお手伝いすべく活動を再開。
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