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ERP・銀行間のクラウドインテグレーションの複雑性

By Steven Otwell

今後 5 年ほどの間に、企業の情報システムの領域において地殻変動が起きます。この先 10 年以内には大部分の企業がクラウド上で ERP を運用しているでしょう。ERP ベンダーと SIer (システムインテグレーター) は、この大規模なプロジェクトからの利潤を追求、長年に渡る移行プロジェクトから得られる利益を享受する態勢を整えており、収益の急増は確実と言えるでしょう。移行プロジェクトの多くはグローバルな性格のもので、複雑なグローバルでの銀行間のインテグレーションへの対応が求められます。

私たちが ERP のクラウド移行プロジェクトを支援し、既に移行プロセスに入った企業からは、繰り返し同じことを耳にします。「こんなに複雑で、時間を費やすことになるとは思ってもいなかったよ。」と。実際のところ、Kyriba が協働する多くの SIer からは一貫して、銀行間のインテグレーションはプロジェクトで最もハイリスクなコンポーネントのひとつであるという話を聞きます。

世界各国の銀行とのインテグレーションの複雑性

プロジェクトの複雑性の理由は、銀行間のインターフェースの開発とは限らず、銀行のタイムラインに翻弄されてしまうことも一因です。現在の企業の IT 部門は、バックオフィスシステム間のインターフェース構築の経験は豊富ですが、これらは基本的に固定的なインターフェースであり、新たなリソースは必要ありません。銀行間のインターフェースに取り組む場合、IT 部門は一般的に、銀行と調整を行うため多くのリソースを必要とします。これには IT、トレジャリー、債務担当 (AP)、コネクティビティの各部門や SWIFT Service Bureau に加え、銀行の IT 部門も含まれます。仕様を策定しても、それが最初のテストを通過することは滅多になく、開発チームが再構築と再テストを行い、もう一度調整作業をこなさねばなりません。銀行からテストフォーマットの承認を得るのに、2 ~ 5 倍の労力が必要になる例も目にしてきました。

銀行がフォーマットを承認したら、IT 部門は、開発 > テスト > 品質保証 (QA) > 非本稼働環境 > 本稼働環境を含む本番リリースに向けた社内手続きを進めねばなりません。実際、1 種類の支払フォーマットを開発、テスト、リリースし、業務担当者が本場環境で使用できるまでに 6 カ月以上かかることも珍しくありません。

SWIFT 接続にかかる労力

よく目にする誤解は、SWIFT は全ての銀行が使用する標準的なメッセージタイプだという思い込みです。確かに SWIFT は MT から XML に移行しつつありますが、送信されたファイルを受け取る方法は銀行によって異なります。どの銀行も独自フォーマットを使用している上、大部分のクライアントは小額、高額、小切手、振替など銀行ごとに多くのフォーマットを必要としています。多くの企業は、取引先銀行に応じて数百種類ものフォーマットの開発とテストを行わねばなりません。IT企業が、銀行接続と支払フォーマットの検証を全て終えるまでに2年以上かかる例も、当たり前のように見られます。

フォーマットが稼働すると、ITインフラ部門が以後は管理を行います。こうした接続機能を管理し、銀行側の問題を解決し、銀行の要請に応じてフォーマットを編集し、必要に応じて新たな銀行を追加するため、ほとんどの企業は追加のリソースを必要とします。取引銀行の数にもよりますが、スタッフ数は平均して 2 ~ 5 人に及びます。

また企業が直面する新たな課題として、2020 年に SWIFT の新たな機能への対応が義務づけられます。2016 年にバングラデシュ銀行が SWIFT 利用者をターゲットとしたマルウェアを使ったハッカーにより、8,100 万ドルの不正送金の被害にあったことから、SWIFTは、インフラのセキュリティだけでなく、BIC コードを管理する企業に義務づける条件も強化しました。SWIFT 接続の自社管理を目指す企業は、Alliance Lite2 (AL2) 導入を試みるでしょう。けれど 2020 年の新たな条件の下では、社内の IT サポートチームは、SWIFT 認証を保持するため、年 1 回の認証確認と最大 12 回ものテストを実施しなければなりません。社内でSWIFT分野の専門知識を持ち、毎年再認証を受ける必要があるため、社内 IT 部門にとってこれは大きなリスクと追加コストを伴います。ひとつのリスクとして、多くの企業は 1 ~ 2 人しか認証を受けられないでしょう。この新たな人材が会社を辞めたら、どうなるでしょう? 予備は誰なのか? 新たな人材を確保するには、どれくらいの時間とコストがかかるのか?

ERP クラウド移行をサービスプロバイダーと共に

この 3 つの主なリスクを軽減し、ERP 移行を加速させ、グローバルな銀行接続を簡潔化するため、多くの企業が Kyriba のコネクティビティに期待を寄せています。20 年の経験と接続機能にルーツを持つ Kyriba なら、お手伝いできます。600 以上の銀行ネットワークに対応する Kyriba の銀行接続アダプターが、ほとんどの ERP や銀行への新たな接続を実現し、開発とテストという困難な作業を不要にし、銀行間のインテグレーションにかかる作業を80%以上軽減することで、ERPのタイムトゥバリューを向上させます。この最高クラスのサービスにより、社内 IT 部門が銀行間のインテグレーションをサポートする必要性がなくなり、SWIFT 分野の専門知識も不要になります。

Kyriba の銀行接続サービスと、貴社の ERP 移行プロジェクトを加速させる方法についての詳細は、コネクティビティの知見を持つ弊社のアドバイザーまでご相談ください。


(原文) Understanding the Complexity of ERP Bank Cloud Integrations
(改訳) 2023/3/22

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