世界のCFOとトレジャラーが2018年に直面する5大ビジネスリスク

By Moez Habib Thameur 2018年4月5日

今は世界経済の拡大期にありますが、世界の株式市場における最近のボラティリティはその曲がり角を迎えていることを示唆しています。世界銀行は2018年の成長率を3.1%と予測しており、企業にとっては追い風となるでしょうが、良好なビジネス環境は賃金インフレ、金利の上昇、低金利での資金調達の終焉をもたらすことが見込まれます。米国の賃金が予想を超える上昇率だったことに大きな反応が見られたように、市場は金融緩和政策の終了に神経質になっています。

 

マクロ経済の動向に加え、他にも著しい変化が起こっています。米国と欧州では既存の政治秩序が問われ、中東では再び緊張が高まり、テクノロジーが私たちの仕事と生活を一変させており、また米国は法人税を大々的に改革しようとしています。変化はチャンスでもありますが、リスクも生じます。

 

では、2018年、CFOとトレジャラーが視野に入れておくべき5大リスクとは何で、それらをどのように管理できるでしょうか?

 

1. サイバー犯罪

 

サイバー犯罪は昔から存在し、今なお増え続けている脅威です。サイバー犯罪者が狙っているのはお金ですので、トレジャラーにとっては特に注意が必要です。2016年のAFP(米財務プロフェッショナル協会)の調査で、約4分の3(74%)の組織が小切手の改ざんやビジネスメールの偽装攻撃による不正送金など、支払業務による不正(未遂を含む)の標的になったことが明らかになりました。標的となった組織のうち3分の1近く(29%)が25万ドル以上の損失を被っています。

 

追加の記事:精度の低い資金繰り予測がCFOにもたらす5つのリスク

 

異常な挙動や疑わしい支払を検知するためのシステムを導入していない企業は、重大な風評被害や場合によっては巨額の経済的損失を被る恐れがあります。ところが、英ヒスコックスのサイバー対策に関するレポート「Hiscox Cyber Readiness Report 2017」によると、調査したアメリカ、イギリス、ドイツ企業のうち半数以上(53%)がサイバー攻撃への準備が不十分であることが判明しました。その一方で、2016年にサイバー犯罪が世界経済に与えたコストは4,500億ドル強に上りました。このため、CFOとトレジャラーはテクノロジー・ベンダーに、自分たちのシステムのために最も効果的なセキュリティ機能に投資しているかどうか確認すべきです。

 

2. 金利の引き上げと低利融資の終焉

 

長年、大企業は超低金利で資金を借りることができました。金融危機後の7年間、米国企業は一般に銀行から3.25%近辺で融資を受け、イギリス企業の借入金利は2009年第4四半期に2.65%まで低下しました。一方、欧州中央銀行(ECB)によると、銀行から固定金利で100万ユーロを10年以上借りる場合の平均金利は、2017年12月時点でさえユーロ圏では1.75%でした。債券市場における借入れコストは、フランスの多国籍製薬会社サノフィとドイツの消費財メーカー、ヘンケルなど一部の企業ではいっそう低下し、マイナス利回りで社債を発行しているほどです。

 

しかし、低利での資金調達はそろそろ終わりを迎えようとしています。米連邦準備基金(FRB)は2015年12月以降5回にわたって金利を引き上げ、英国銀行も2017年11月に10年以上ぶりに初の利上げを発表しました。ECBも金利を引き上げる予定ですし、日本銀行は債券買入れプログラムを縮小しており、これはいずれ金利が上昇していくことを示唆しています。企業は今後数か月から数年かけて資金調達コストが上昇し、借入れの多い企業ほど資金繰りが厳しくなると考えるべきでしょう。

 

役員から高い資金コストによる不利益についてあれこれ詮索されるのを避けるため、グローバルCFOとトレジャラーはなるべく早期に借り換え、返済までの期間を延ばすことで金利負担の増大リスクを抑えようとすることでしょう。また、短期の借入額を減らすためグローバルな余剰現金残高を効率的に利用したり、買収に必要以上に払ってあとで後悔しないようM&Aに徹底したデューディリジェンスを実施したりすることで、効果的なキャッシュ・マネジメントを通して借入れコストの増大リスクを軽減することもできます。

 

3. 米国の税制改革

 

米国の法人税は2018年1月1日発効で35%からから21%に減税されました。さらに、改革パッケージの一部として、米国企業がこれまで海外に蓄えてきた現金を本国に戻すよう奨励するため、海外に保有する企業利益に1回限りのリパトリ税を課すことも決まりました(流動資産には15.5%、非流動資産には8%)。

 

表面上、この税制改革は米国で活動している海外企業にとって子会社の税負担が軽減されるため恩恵があるように見えます。しかし、税源侵食・租税回避防止税(BEAT)や利息控除の上限といった一部のルールは、米国で事業を営み国内外に資金を移動させる多国籍企業にとっては問題です。この結果、CFOとトレジャラーは米国内外における資金の流れをいっそう可視化し、グループ内取引の戦略を見直す必要があるでしょう。

 

4.ブレグジット

 

イギリスは2019年3月29日にEUを離脱する予定ですが、離脱を円滑にするため2年間の移行期間を設けることがほぼ確実視されています。移行期間中、イギリスは今と同じようにEUのルールに従わなくてはなりません。まだ通商協定をめぐる議論を深めていく必要があり、離脱の長期的な影響は明らかでありません。かつてはイギリスの規制当局が金融サービスに対するEUの法律に多大な影響力を持っていましたが、今後は例えば銀行に対しバーゼル資金・流動性基準がどう採択されるかという観点から、イギリスとヨーロッパのルールに相違が生じる可能性があります。

 

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、外国為替のボラティリティ、資金不足の不安、そして企業が突然なじみのない金融機関と関係を築かなければならない場合にカウンターパーティ・リスクが高まるなど、ブレグジットに伴う不確実性は、トレジャラーに多くの難題を投げかけます。そこでPwCは企業に対し、いつでも現金にアクセスでき、財務リスクを監視でき、市場の変化にファイナンシング戦略を適応させられ、また金融機関との関係を管理できるようなプロセスとシステムを導入するよう勧めています。

 

5. 経済ショック

 

2018年に入ってからの株式市場のボラティリティは暴落(crash)というより調整(correction)と表現していいでしょうが、破滅的な状況(catastrophe)が迫っている可能性も考えられます。政府が債券買入れ額を減らす結果として債券利回りが上昇し、それと同時に株価の下落が起こるのは偶然ではありません。2月初旬、投資家が債券に投資するため株式を売却した結果、基準となる米国10年債利回りが過去4年間で最高の2.85%まで上昇しました。

 

現在の市場環境はトレジャラーにとって2つの大きな意味を持っています。まず、国債利回りが上昇すると企業は歴史的に低い利札で社債を発行するのが難しくなります。第二に、株式市場の大暴落が起こった場合、消費者心理が悪化し、消費者も企業も支出を抑制して、企業のキャッシュフローがひっ迫する可能性があります。また、困難な市場環境では銀行と債券投資家は信用力に疑問がある企業への資金提供を拒否することがあります。もちろん、企業が大規模な経済ショックの影響をフルに被らないよう衝撃を緩和することはまず不可能ですが、たとえ厳しい時期でも運転資金をうまく管理することが組織として生き残るうえで重要な役割を果たします。

 

対応は万全か?

 

流動的な環境では、迅速に対応できることが重要です。このため、変化をチャンスととらえ、うまく活かせないCFOやトレジャラーは、組織の競争力を弱体化させることになりかねません。幸い、インハウス・バンク機能やノーショナル・キャッシュ・プーリング、支払業務による不正の検知システムといったパワフルなテクノロジー・ツールと組み合わせることで、効果的なキャッシュ・マネジメントが長期的なビジネス活性化の素晴らしい基礎になります。キリバのクライアントであるオハイオ州のプラスチック・サプライヤー、A.シュルマンは、銀行手数料の削減や借入れコストの低減、税効果の達成に向けてキャッシュ・プーリングとインハウス・バンクを使うことで多くの時間とリソースを節約し、クラス最高の地位を築いたトレジャリーの良い例です。結局、変化は組織にとって必ずしも脅威になるわけではありません。テクノロジーを使うことで利益を稼ぎ、さらに成長していくための素晴らしいチャンスにもなるのです。

 

*本記事は2018年2月に掲載された翻訳版となります。オリジナルはこちらをご参照ください。

 

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