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成功する資金予測の作成

By Kyriba


トレジャリーの課題第 1 位は「信頼性の低い資金可視化と予測」であり、CFO の潜在的懸念に最も繋がっている — 2018 年 11 月の CFO Publishing の調査「CFO が財務担当者に戦略性を求める主な 3 領域 (3 Key Areas Where CFOs Say Treasurers Need to be More Strategic)」でひとつの結果が示されました。

どの企業も、より予測を効率的に行うことについて話していますが、効率的な組織としての取り組み (プログラム) を立ち上げるのに十分な人材、時間、テクノロジーを確保できている企業はごく僅かと言えるでしょう。財務領域の主な意思決定において、信頼性のある正確な資金予測の価値を理解することは、予測への適切な投資を行う上で非常に大切です。為替ボラティリティの影響を防ぐなど、予測が必要な理由は数多くありますが、正確な資金予測と最終結果としてのファイナンシャル・パフォーマンスに結実する、CFO と財務担当者への助けとなるであろう、いくつかの重要なポイントがあります。

資金予測・キャッシュフロー予測とは?

そもそも、資金予測とは何でしょうか ? 資金予測が正確であれば、確信をもって将来の資金残高を捉えることができ、それにより、より長期的な投資、有利子負債の削減、より効果的なヘッジの取り組み、柔軟なグローバルでの資金移動が可能になります。資金ポジションは、多くの場合、「当日から 5 営業日」までを対象とします。その目的は、日々の流動性を管理することで資金の不足分を補い、余剰分を集め、活用できる資金からは一定の収益を得ることです。

資金にかかる予算は経営企画部門や FP&A (Financial Planning and Analysis) などによって作成され、「1 年以上」を対象期間として掘り下げられます。一方で、フリーキャッシュフローを重視するガイドラインを尊重する傾向から、間接的な予算ベースの予測と、直接的なキャッシュフローベースの予測との照合を、四半期毎に管理するようになってきています。

資金予測のよくあるアプローチとして、資金ポジションの視野を「1 週間から 1 年の間」で任意の期間に拡げます。予測は、複数のデータソースを使用し、資金残高の予測の信頼性を高めることで、資金に関するより良い意思決定を下せるようにします。より良い意思決定によって生まれる価値 — それこそが、資金予測の価値と言えるでしょう。

なぜ、資金予測が重要なのか?

では、なぜ資金予測を行うのでしょう? 効果的ではない資金予測はコストがかかり、株主価値に影響を及ぼします。不適切な資金予測への取り組み (プログラム) は、多くの悪影響をもたらすため、効果的な資金予測と最終的なファイナンシャル・パフォーマンスとの関連性を理解することが非常に重要です。「キャッシュリッチだ」、「金利が低すぎる」といったエクスキューズは、もはや資金の投入やリターンを求める投資家たちを満足させることはできません。企業の成長目標を達成するための資金の予測と配置の可視化ができていななければ、CEO や CFO は、株主やアナリストの前で愚かしく見られてしまうリスクがあります。

国外のキャッシュフローを捉える

世界的な通貨ボラティリティは収まる気配がなく、CFO は、国外からの資金の流出入による価値を維持するようプレッシャーを受け続けています。企業は、予期せぬヘッジされていない為替の影響によって、一株当たり利益が減少したり、バーゼル 3 以降の環境では、キャッシュフローを維持(もしくは増加)することが困難となる可能性があります。

資金予測を通じて、営業活動によるキャッシュと営業活動外のキャッシュを時間軸で区分し、より長期的な投資戦略にキャッシュを配分するために必要な精度を提供します。これにより、以前実現した投資収益率を維持したり、不要になった資金残高を銀行から回収し、別の用途に配分することができます。

予測される資金残高の確実性は、CFO が、コーポレートアクションや戦略的投資を予想し、それに備える能力を高めることにつながります。たとえば、資金収支の予測に確信が持てなければ、CFO や財務担当者は、資金、負債、資本の構成要素に関するガイダンスを提供するなど、M & A の重要な意思決定に貢献することができません。

グローバルにキャッシュを保有している場合、自社株買いや増配は困難です。多くの場合、CFO は資金を本国へ送金するよりも、国内で資金を借りた方が安上がりだと考えますが、この分析には、予測される資金残高の確実性が必要です。事業価値を最適化するためには、予測の信頼性が重要です。CFO は、組織の成長目標の達成に向けて、資金を再投資する方法を決定するために、効果的な資金予測を必要とします。予測に確信が持てなければ、不必要な借入や株式による資金調達につながります。

データの品質こそが必要不可欠

適切な情報を特定し、それを一元的な予測管理のシステムに取り込む上で最も効率的な方法 (例えば自動化) を講ずることは重要です。

自動化は重要であるとした上で、データの品質もまた成功に必要不可欠です。予測データを用意する際、明細 (ラインアイテム) ごとのデータソースは異なる場合があります。データソースによって、明細ごとに予測を用意する上での最適解が異なり、例えば、多くの財務部門は、債務データ (AP: Account Payable) を ERP から直接インポートすることを好む一方で、債権データ (AR: Account Receivable) は、過去データやモデルを元にリニアに試算・推定することを好むかもしれません。財務部門の業務が効果的であるためには、全ての手法が包括的に自動化・担保され、予測を構築する初期セットアップ、保守、日々の運用が容易に行え、かつユーザー自身が保守できること(プログラミングを書くようなことなく)が重要です。

成功のための協業

予測を立てるために最適なデータを決定するためには、その重要な情報にスムーズにアクセスするために、誰と協業するのかを決めることも重要です。多くの場合、財務部門はそのデータを提供するシステム担当者や業務担当者に対して直接管理する権限を持っていません。しかし、財務部門は包括的な予測を作成するために、この外部の情報に依存しているため、質の高い情報をタイムリーに受け取るためには、社内での高いコミュニケーションスキルが重要になります。債務担当、経営企画・FP&A、IT、地域のコントローラはすべて、組織ごとに予測を作成しています。多くの財務部門は、CFOと一緒にトップダウンの協業のモデルを計画し、効果的な資金予測を部門目標や人事評価上の報酬に組み込んでいます。これにより、部門目標としての資金予測に目を向けることとなり、各部門がそれぞれの役割を果たす上でのモチベーションに繋がります。

資金予測の精度を測る

最も重要でありながら、見落とされがちなステップは、予測の精度測定です。差異の原因を特定するために詳細なレベルで予測の精度測定を行うプロセスを導入することは、品質を向上させ、最終的に予測の差異を減らしていくために重要です。同様に重要なのは、特定された差異に基づいて予測データが改善されるよう、システムと関係者への継続的なフィードバックを行うことです。継続的なフィードバックは、財務担当者以外が予測に貢献している場合に特に重要で、正しい行動と資金予測の数値が積極的に強化される一方で、改善の機会が十分に伝えられるようにします。これは、フィードバックが財務部門以外の関係者の KPI や四半期の目標に沿ったものである場合に特に効果的です。

資金予測の成功の鍵

予測差異分析は、複数の「スナップショット(その時点のデータの断面)」を取って詳細に行う必要があります。もしサマリー(例:3カ月間の予測がどれだけ効果的であったか)しかレビューされない場合、その時間枠の中に隠されている変動を把握できません。毎日、毎週、あるいは隔週で測定することで、見過ごされてしまうような予測値と実績値の浮き沈みが明らかになります。幸い、Kyriba のような TMS の BI (ビジネスインテリジェンス) 機能は、このレベルの詳細な情報を提供するために必要なデータの視覚化と分析を行えます。資金予測は、非営業の資金の預り金の割合が高い「キャッシュリッチ」な企業にとっては特に重要です。海外からの収益が多い多国籍企業は、効果的なヘッジを行い、株主に確実な資金予測を提供するために、より良い予測行う必要があります。予測で重要なのは、予測データのさまざまな流れをモデル化するための多くの選択肢を持てるような柔軟性です。効果的な予測を作成するために、インポート、回帰、推定、またはその他の計算方法が必要かどうかは、データの精度によって決まります。

予測精度を測定しなければ、予測に長けているかどうかを知ることはできません。データの可視化により、カテゴリー別、期間別、地域別など、重要な差異に焦点を当て、将来の予測のために改善すべきデータを切り分けることができます。資金予測の投資対効果は非常に高いと言えるでしょう。

資金予測を改善していく

まとめると、資金予測の価値は、企業が余剰資金をもって何ができるのかによって決まるということです。そのキャッシュの価値を測るのは、より長期でキャッシュリターンの高い投資、負債の返済、サプライヤーの早期支払からの収益、あるいは、組織的な新しいプロジェクトへの投資かもしれません。資金予測を完全なものにしていくことは、キャッシュをワーキング・キャピタルから解放し、そういったより高い価値をもたらす用途に転換することを意味します。


(原文) Creating a Successful Cash Forecast
(改訳) 2023/3/31

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