第一回:「財務業務に必要な3つのレンズ」
「見る」というのは財務業務を行う上での最初の行為ですが、キリバを使うとグローバルの財務情報を瞬時に把握することが出来ます。いわゆる「可視化」です。
日頃、多くの企業の財務部門とお話をさせて頂きますが、よく、可視化をして日次で資金の動きをモニタリングすることの目的はなんでしょうか?モニタリングのポイントはどこでしょうか?と質問されることがあります。
これに対する答えとしては、資金の動きを日次でデジタルに見ること、要は月次頻度どまりで見て経験と勘ではなく、データに基づき資金の動きを高頻度に見ることが目的でありポイントです。企業の活動は最終的にキャッシュの動きに現れます。キャッシュの動きをデジタルにとらえることが、企業活動の現状の理解にもつながります。
具体的には、現在の資金ポジション、将来の見通し、移動可能資金額、資金繰り予測と実績のブレの原因、不要な金融コストの有無、不要な銀行手数料の有無、オペレーションコストの最適化、為替リスクや金利リスクにさらされている資金の量、不正な資金の動きなどをより高い頻度で見ます。
企業経営の生命線であるキャッシュを制御・管理する唯一の方法は、保有しているキャッシュを完全に理解することです。キャッシュをグローバルに可視化して隅々まで把握し、“ダークキャッシュ”に光を当てなければなりません。見えないものは管理できません。これが真実です。眠っている余剰キャッシュを処分して、企業のリスクを軽減し、会社の成長に必要な資金需要にリソースを解放しましょう。
そのためにもデータをもとにキャッシュの真実を見つめ、新たな洞察と発想を生み出します。
高頻度でデータに基づいて見ることで問題が見えて、財務体質が改善したり、財務コストが削減できたり、財務リスクの管理が強化できたり、将来キャッシュフローの最大化、といった効果が表れてきます。
逆にいうと、財務の領域で効果を出すには、「問題を見つける」ことがスタートであり、要は見える化をすることがスタートです。
よくあるのは見て何をするのか?という議論ですが、そうではなく問題を見つけるために見るのです。世の中に課題や問題のない組織はありません。
従って、見たけれど特に問題はないというのは、見方が悪い、見ている場所が悪いということなります。
私は、グループ全体の資金を最適活用する手立てを考え実行し、その資金を元に企業の戦略実行に対して経営の支援を行うトレジャリーにおいては3つのレンズを持つべきだと考えます。
その3つのレンズは一つは「広角レンズ」、もう一つは「望遠レンズ」、そして3つ目は「接写レンズ」です。
一つ目の広角レンズは財務と事業を合わせて見て、組織の現状を分析することです。
二つ目の望遠レンズは、自らの財務専門性で先を見る、財務的見地で会社の将来を予測、意思決定を支援すること。
そして三つ目の接写レンズはが先程述べた財務的見地で細部を見ることで、この接写レンズを持つことであり、細部までデータ収集・現状把握でどこに問題があるのかを見つけだすことが、トレジャリーの活動のファーストステップだと考えます。
下村 真輝 (Maki Shimomura)
トレジャリー・アドバイザリー、ディレクター
一橋大学卒、MBA(ボンド大学大学院)。三菱重工業株式会社にて原子力事業の海外営業およびM&A等事業開発業務を経て、株式会社三菱東京UFJ銀行にて海外で事業展開している日系大企業や、クロスボーダーでのM&A、PMI案件に対し、グローバルベースの財務戦略、組織再編、海外投資手法等のアドバイザリー業務に従事。株式会社JVCケンウッドにて、CFO補佐として、グローバル財務管理の基盤構築を手掛けた。