一つで全てできる特効薬はありません ~グローバル銀行接続の方針設計のコツ

By 石黒 直裕 2016年6月21日

*本ブログは2014年8月の記事を日本語訳したものになります。

 

グローバルで財務管理を行うときに、現在も、そしてこれからも大きな課題となるテーマの一つが、銀行との接続方法です。財務担当者は銀行取引の情報をタイムリーに受け取って可視化したいものです。もちろんそれは、合理的な費用で。

 

この合理的な費用でタイムリーに銀行取引情報を取得するという目的は、長年、相反するものでした。常にコストと利便性のトレードオフでした。しかしながら、SaaSという、必要な機能を必要な時に必要な分だけサービスとして利用できるソフトウェア・アプリケーションと、必要な接続だけサービスとして利用できる銀行接続サービスの登場によって、取引行すべてと接続できる利便性を、過剰な費用負担をせずに享受できるようになりました。

 

アメリカでは、トレジャリーマネジメントシステム(TMS)と銀行との接続は、ERPとの接続と同様に、ホスト間接続によって行われることが多いです。ヨーロッパでは、EBICSなどの地域標準の銀行プロトコルを用いて接続することが一般的です。

 

この方法は国内に限って接続するのであれば非常によいものです。その国内では、数多くの銀行接続ソリューションのベンダーが多様なサービスを提供していますので、そのなかから費用対効果が最も優れたものを選択すればよいためです。しかしながら、この選択方法は、グローバル全体の銀行接続方針を十分に考え抜いたうえでないと、却って高くつくことがあります。

 

それでは、グローバルな銀行接続の最適な方針をどのように選べばよいのでしょうか? それは実は簡単なことで、選択肢を研究し、貴社の取引銀行全体に対してもっともフィットする接続方法を選択すればよいのです。

 

銀行接続の選択肢

 

1.     銀行ポータルによるデータ収集・統合: 取引銀行の取引明細を取得するのに一般的なのは、その銀行のインターネットバンキングなどの銀行ポータルを使って取得することでしょう。これは非常に便利な方法ですが、時には高くつくこともあります。また、財務担当者の中には、この方法に躊躇する人もいます。なぜならば、その銀行に依存することになり、グローバル取引の決済に対する柔軟性を失いますし、その銀行に対するカウンターパーティリスクが増すからです。マルチバンクといったときに、銀行取引明細を取得する限りでは、複数の銀行ポータルを使うことでもよいかもしれません。しかし、マルチバンクで支払の集中化をしたいときがあります。とくに、コストのかかる国際送金を減らすために、これまで国際送金をしていたところを、現地の地場銀行から国内送金で送金するように切り替えることもあります。このようなときには、他の選択肢が必要になります。

 

2.     ホスト間接続: ホスト間接続は、通常はセキュアなFTPによって行われるもので、北米とその他のいくつかの地域では非常によく用いられている方法です。この方法が可能であるならば、これは安価で信頼できる選択肢です。貴社のIT部門または外部のベンダーがその運用を容易に行えます。外部に委託すると、月々のサポート費用、運用費用が発生しますが、ホスト間接続の場合、従量料金が後で追加請求されることはなく、取引件数の多い銀行の場合、ホスト間接続は理想的な選択肢となります。しかしながら、「利用できるのであれば」という条件付きです。ホスト間接続は、ヨーロッパやアジアの銀行ではあまり一般的なものではなく、ホスト間接続以外の方法を用いて、ホスト間接続ができる銀行と補完し合うようにする必要があります。

 

3.     国や地域のネットワーク: EBICSなどの地域ごとのプロトコルやネットワークは、特定のヨーロッパの国やアジアでは用いられています。その地域の全てまたは大部分の銀行がそのネットワークに参加しているため、そのネットワークに接続できれば、それに参加している銀行全てに接続できることになります。そのネットワークに接続するオプションが利用できるのであればそれは、非常に価値の高い選択肢です。初期費用はかかるものの、取引コストは無視できるレベルか、非常に低いものだからです。その地域においてある程度の数の取引銀行があったり、取引件数があるのであれば、その地域のネットワークを利用することは、銀行取引明細の取得にとっても、送金にとっても非常に魅力的な手段です。

 

4.     SWIFTコンセントレーター: SWIFTのサービスについては1冊の本が書けるほど、非常に多様な送受信のメッセージタイプとそれらのサービスがあります。その中のひとつにコンセントレーター・サービスがあり、これは、接続サービス・プロバイダのSWIFT利用資格を借りて、銀行取引明細や支払のデータの送受信を行うものです。SWIFTへのアクセスは通常、BICコードと呼ばれるIDによって行われ、そのプロバイダが持つBICコードを利用します。その接続サービス・プロバイダの顧客はみな、そのプロバイダのBICコードを共有することになります。理想的な接続サービス・プロバイダとは、銀行の子会社か銀行との提携会社であって、SWIFTの全参加行にアクセスできて、各銀行との接続初期設定も最小限の作業で行えるようなベンダーになります。コンセントレーター・サービスの料金体系は非常に多岐にわたりますが、もっともよく見られるパターンは、銀行取引明細は口座単位、支払は取引単位で課金されるものです。コンセントレーター・サービスに価格メリットが出るのは、1つの銀行に複数の口座があまりない場合、たとえば12銀行に15口座などのケースです。

 

5.     SWIFT for Corporate (企業向けのSWIFT): SWIFT for Corporateプログラムは、企業をSWIFTのネットワーク(SWIFTNet)のメンバーたらしめるものです。企業は自社専用のBICコードを取得し、SWIFT for Corporateプログラムに参加している他の銀行や組織と自由にメッセージを交換できるもので、そのメッセージには銀行取引明細や支払、財務取引のコンファメーションなどが含まれます。さらにいくつかの利用手段があり、エントリーレベルでは、Alliance Lite2(アライアンス・ライト2)があります。接続プロバイダが設備の運用や初期設定をすべて行うモデルであるサービス・ビューローもあります。これらの違いは、どこまで自分たちで構築、運用していくかの違いで、それに即して料金も異なっています。たとえばキリバのようなトレジャリーソリューションのプロバイダは、Alliance Lite2もサービス・ビューローもともに提供しています。

 

どちらが自社にあっているのか

 

その答えは、貴社の状況次第ということになります。適切な銀行接続手段を選択する際には、貴社の銀行取引の内容、つまり銀行数、口座数、そしてもっとも重要な要素が取引件数です。

 

全ての銀行、全ての取引に対応できる万能の銀行接続方法はありません。たいていの場合、複数の銀行接続方法を組み合わせることになります。貴社の銀行数、口座数、取引数は、銀行ごとに平準化されていないからです。ある大規模な米国の多国籍企業は300以上の銀行口座を持っていますが、その半数以上は2,3の米系銀行の口座です。それら2、3の銀行との接続にはホスト間接続がベストでしょう。送信データボリューム等による追加コストが発生しないためです。その他の銀行口座については、銀行数、銀行の所在地、送金の有無、現地のネットワークの利用可能性、SWIFTを使った場合の長所と短所などを勘案して、最適な方法が決定されます。

 

SWIFTを使うにしても、どのSWIFTサービスを使うかについて慎重に検討しなくてはなりません。SWIFTNetを利用するときは、データの送信者にデータ処理料が課金されます。すなわち、貴社が送金を行うとき、SWIFTNet経由で送金する件数ごとに課金されるわけです。一方、銀行取引明細を銀行からもらう場合は、送信者である銀行に課金されているわけです。したがって、その銀行が負担している送金費用も忘れてはなりません。この潜在的コストは、しばしば忘れてしまいがちなので注意が必要です。銀行も当然、なんらかの手数料に含めて、この銀行取引明細の送信費用を貴社に転嫁しているはずです。だからこそ、貴社の銀行取引の内容次第で、すべての銀行をSWIFTNetを通すか、一部の銀行だけにするか、他の違う接続手段と組み合わせるのかが、決まってくるわけです。

 

したがって、貴社の銀行取引の詳細な内容を正しく知ることが、バランスの取れた銀行接続方法を決定するうえで、非常に重要になってきます。見積もりの前提となる口座数や送金件数が実態から大きくかけ離れていると、選択肢を間違えることになり、結果、毎月、よけいな出費を強いられることになります。グループ全体の送金件数などの銀行取引の実態をグローバルで把握することと、それを前提に最適な銀行接続方法の組み合わせを選定する作業は、非常に気が遠くなるような作業かもしれません。しかし、後者については、銀行接続手段のオプションを豊富に持ち、最適な選択肢をシミュレーションして選定するノウハウをもったベンダーが、あなたの選定作業をサポートするでしょう。但し、そのパートナーたるベンダーは、多様な銀行接続手段を複数、最低でも2,3の方法を提供できるようなベンダーでなければなりません。ベンダーの都合で最適な選択肢をするのではありません。貴社にとって最適な接続手段を選定するのです。

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