これはキリバの基本的なメッセージです。そのための武器を財務担当者に提供させていただくことを、キリバがご提供できる価値と考えています。
これらの違いは何でしょうか? ここでいう財務管理は、従来の伝統的な財務業務で、主に資金ショートをしないよう資金繰りを管理して、支払いをもれなく行う定型業務を指しています。一方、トレジャリーマネジメントは、さらに進んだ付加価値業務で、グループ全体の資金を最適活用する手立てを考え実行し、その資金をもとに企業の戦略の実行に対して経営の支援をするものです。
財務管理
|
トレジャリーマネジメント
|
|
役割
|
管理部門
|
戦略部門
|
ミッション
|
資金繰りを適切に管理して、資金ショートしないようにする
|
企業の戦略、事業計画に対して財務的見地から意思決定をする、もしくは意思決定のサポートをする
|
日々の業務
|
入金・支払の実行と管理、借入や為替の管理
|
グローバルで資金を最適活用するためのアクションを実施。戦略や事業計画のレビュー、意思決定
|
また「トレジャリーマネジメント」とは、ご承知の通り、英語をそのままカタカナにしたものです。つまり、欧米企業ではこれが財務部門の通常の使命であり業務なわけです。本来であれば、英語をできるだけ日本語に置き換えるところですが、なかなか適した日本語がありません。「財務管理」と訳すと上の表の左の意味になってしまいます。「資金管理」と訳すとさらに矮小化されてしまいます。そのためカタカナのままにしています。
そこで欧米企業を意識しながら、この両者の違いについて、もう1点加えましょう。「管理」について根底にある見方、考え方です。
財務管理
|
トレジャリーマネジメント
|
|
管理の
|
現場指向・子会社の自主性優先(もしくは曖昧)
|
本社主導・徹底した標準化の追求
|
「子会社の自主性優先」については異論があるかもしれません。確かに日本国内では本社が強い場合の方が多いでしょう。でも、海外子会社についてはどうでしょうか? 現地事情がわからないとか、従って、現地に通じた現地のマネジメントに任せておけばよい、ということになっていないでしょうか? ここではこれを否定するものでは決してありません。しかし、その大前提として本社がしっかり理解、把握したうえで任せるべきと考えます。
さて、ここまでで、“今どき、この表の左側はないよ”と思われた方もいらっしゃるかもしれません。その通りで、財務部門の役割は企業によって二極化しています。“右側”のトレジャリーマネジメントを実行、もしくは目指している企業と、“左側”の財務管理に留まっている企業です。ある程度の規模の企業になればどこでもグローバル展開していると思います。しかし残念ながら圧倒的に“左側の企業”が多いのが実情です。
では、なぜ右側のトレジャリーマネジメントなのでしょうか? または、なぜ進んだ企業はトレジャリーマネジメントを指向しているのでしょうか?
いうまでもなくキャッシュは生命線です。万が一の時になくてはならないだけではありません。グローバル化のなかで欧米などの企業と肩をならべ、また、勝っていくためには、キャッシュを必要な時に必要なだけ使えないと、負け組になる可能性があります。現在は、買収や研究開発など成長戦略に巨額の投資が欠かせない競争環境にあります。キャッシュが潤沢にある企業でも、買収にだいぶ使ってしまい、さらに買収資金を確保すべくトレジャリーマネジメントのレベルアップを目指しています。
有事への対応も記憶にまだ新しいところです。金融危機の時は、日本を代表する企業でさえ、信用収縮に直面し「倒産がCFOの頭をよぎった」と言います。2011年には大地震や大洪水もありました。また、昨今のコロナ渦も例外ではありません。サプライチェーンをすぐに復旧して事業を元に戻さないと、被災していない国や地域のライバルに顧客を奪われ、マーケットシェアを失いかねない状況にありました。すぐに多額の復旧資金を必要としている地域にすみやかに割り当てなければなりません。
つまり、今、財務部門に必要なのは、目先の入出金の管理だけではありません。グローバル全体かつ中長期的な視点でキャッシュの管理をして、経営の機動力を維持することです。したがってキャッシュの管理は、リスク管理の肝の一つです。言い換えれば、キャッシュの管理の高度化、トレジャリーマネジメントへの指向は、費用対効果で論じることのできるレベルではなく、企業の存続、発展に不可欠です。
そしてはそれは、本社財務部門の位置づけが「本社主導・徹底した標準化の追求」を必然的に指向することになります。本社のやり方を全部子会社に押し付けろと言っているのではありません。今まで以上に子会社の現場の状況を把握して、全体最適の視点で、子会社や地域統括会社をサポートしていくことになるはずです。
トレジャリーマネジメントではなく、財務管理のレベルに留まっている場合の機会損失は計算のしようがありませんが、問題点を2点、ここでは指摘しておきます。
日本の企業は海外の子会社管理が不得手であるとしばしば聞きますが、財務について言えば、海外の子会社の方が進んでいるということも原因の大きな一つだと思います。欧米の方がトレジャリーが進んでいるため、欧米の子会社の財務担当者の方がスキルや経験が豊富で、本社の言うことを聞いてくれないケースはよく聞きます。
いざとなるとメインバンクが助けてくれる、何とかしてくれる、とは今でもよく財務担当者から聞きます。しかしリーマンショックの時は、大企業といえどもそうではありませんでした。また海外M&Aや海外進出に伴う資金が必要になった時に、その銀行が対応できるスキームや資金量の制限が加わることもあります。その銀行によって事業展開が束縛されるとしたら本末転倒です。メインバンクを否定するものではありませんが、事業展開に関しては企業側が主導権を握っている必要があります。
いま“左側”にいる財務の方と話していて、“右側”のトレジャリーマネジメントを指向することは否定される方はいらっしゃいません。ひとえに喫緊性、優先度といった点でなかなか右へ行くアクションへ移せないようです。
すでにトレジャリーマネジメントを指向している進んだ企業がなぜ“右側”へシフトししたかについては、大別すると2パターンあるようです。一つは黒船。外部からCFOや財務部長が来たり、欧米企業の傘下に入ったり、または、それに近い経験がある場合です。もう一つは火傷の経験です。資金の確保に苦労したり、不正や不祥事が起きた経験です。
この二点がなければ、つまり、何か背中を強く推すものがなかったり、もしくはお尻に火が付く状態にならなければ、他の多くの優先課題に劣後してしまうのは致し方ない面があると思います。
致し方ないとはいっても、そのままでは先に述べたような問題点を抱えたままです。グローバルでの事業拡大の足を引っ張りかねません。であるならば、できるところから少しずつ始めてみませんか?
たとえば、子会社の銀行口座の日々の残高が一枚の表で見れるだけでも大きな一歩です。弊社の実際のプロジェクトでは、ボタン一つで全口座の最新の一覧表が見られるようになっただけで、役員の方を始め関係者の反応が変わってきました。「子会社の口座なんか見て意味あるのか?」と言っていた人々が一転、プロジェクトのサポーターになります。今までのエクセルの集計作業がなくなりますので、その浮いた時間を使って、この一覧表を眺めていると、それぞれの子会社に対して様々な疑問が出てきます。その疑問をもとに確認したり、アクションをとっていくことで、「戦略部門へ」という動きにつながっていきます。
今は、子会社が「見えていない」ので、“見えた時に何がわかるのだろう”“見てどうするのだろう”という不安や躊躇があります。鶏と卵です。百聞は一見にしかずです。一度に全部変えるアクションを起こすのは難しいですから、一部の地域や子会社からでも始めて見ることを強くお勧めします。
冒頭の、「財務管理からトレジャリーマネジメントへ。財務部門は管理部門から戦略部門へ。」というメッセージに戻ります。キリバの製品はクラウドのメリットを生かして、できるところからトレジャリーマネジメントへの一歩を踏み出せるように工夫されています。しかも1,000社以上の欧米の企業も使っているため、トレジャリーマネジメントの機能は全て揃っています。これを駆使して、貴社のグローバルでの展開と成長を支える戦略的貢献をしていただきたいと願っています。
おススメEブック
● 財務部門をプロフィットセンター(利益獲得部門)に変える方法
● 財務管理システム設計のベストプラクティス
● 15分でわかるアクティブリクイディティ(Active Liquidity) -流動性を活用することで、資金、支払、リスクを最適化-