第二回:「企業価値の番人宣言」:シリーズ「財務のデジタル化が企業にもたらすもの ~見る・守る・減らす・増やす~」

By 屋形 俊哉 2019年5月8日

 ゴールデンウイーク前から始まった連載形式でのブログの第二回目、今回は「守り」をテーマに取り上げます。

 

■「守り」は財務の本業

 

 財務が守るものと言えば、まず浮かぶのは企業のお金です。

 

・お金の価値を守る(為替リスク、金利リスク) 

 

・お金の量を守る(不効率なプロセス、不十分な税務対策、不正なアクセス)

 

・お金の流れを守る(取引先や金融機関との間での流れ、グループ会社間での流れ)

 

 

また、守りに関して、日本で最初にCFOを名乗ったと言われている元ソニーCFOの伊庭保氏は、CFOの仕事を「企業価値の番人、基本理念の守り人」と定義しています(※1)

 

 キリバのブログでも「守り」に関するものは多く、タイトルで判断するだけでも2018年では以下の8本があります。

 

 

 ②ビジネスメール詐欺から企業価値を守る方法(10月)

 

 ③トレジャリー・マネジメント・ソリューションで支払の悩みの種を取り除く(6月)

 

 ④トレジャリーは不正支払に勝つことができるのか?(5月)

 

 ⑤CFOの視点: 最高財務責任者は増加するグローバルの脅威に対し、どのような効果的施策を打つべきか(4月)

 

 ⑥世界のCFOとトレジャラーが2018年に直面する5大ビジネスリスク(4月)

 

 ⑦精度の低い資金繰り予測がCFOにもたらす5つのリスク(3月)

 

 ⑧財務の自動化は戦略的リスク管理をいかに可能にするか (newell社事例)(1月)

 

そして、近年、事業のグローバル化やテクノロジーの劇的な進化などによって、ボラティリティも拡大し、リスクの種類も量も増え、多くの日本企業の財務部門の方たちが、日々、「守り」に悪戦苦闘しています。

 

■財務のデジタル化で変わるもの

 

  先日、キリバのプリセールスチームの中でデジタル化とシステム化の違いについて

 

ディスカッションする機会があり、その中でこんな意見が複数ありました。

 

・Excelで収集&集計していた資金繰りの実績や予測の業務がTMSやRPAを導入すること

 

で自動化される → これはシステム化

 

・上記のようなプロセスのいくつかが自動化され、財務部門が仕事のやり方を変える、「数字を作る」から「数字(データ)を活かす」に変わること → これがデジタル化

 

 「数字を活かす」とはシステム化で自動収集されたデータ(事実)を活用して、判断、考察、示唆、意思決定(支援)に財務業務をシフトすることを意味します(※2)。

 

 この変化を「守り」に当てはめると、例えば以下のようなシステム化があります。

 

・TMSを活用してグループ内の為替エクスポージャーの情報を自動で収集し、ヘッジポリ

 

シーに沿った分析結果の出力と外部のマルチバンクポータルとも連携したヘッジのプロ

 

セスを構築する

 

・グループ各社の支払いデータの銀行への送金プロセスにTMSを活用し、送金前に不正を検知、ブロックし、必要に応じて修正する一連のワークフローの仕組みを構築する

 

こうしたシステム化によって、為替リスクや不正リスクなどから企業のお金を守る業務の

 

精度は格段に高まることでしょう。

 

 しかし、業務の精度が高まり、損失を防ぐだけでは、まだシステム化の延長線上で考えられた変化(効果)であり、その投資によって自動収集されたデータを活用して、財務の専門性をベースに考察し、財務戦略においては自ら意思決定し、経営に対しては意思決定を支援することに財務はより注力し、経営への貢献を高めることが財務のデジタル化による変化(効果)なのではないでしょうか。

 

■「守ること」「変わること」をもっとアピールする

 

しかし、財務は企業の中で最もデジタル化への投資が遅れている領域のひとつである

 

ことは、これまでもいろんなところで指摘されてきました。

 

 また、情報セキュリティに関しては外圧や法規制もあって、投資せざるを得ない状況に

 

ありますが、いわゆる「守り」ということに関してはこれまで消極的な日本企業が多かったように思います。

 

 それは「攻め」の投資がPLにおける影響がわかりやすいのに対し、「守り」の効果は測りづらく、わかりづらいという投資の承認者側の視点が大きいと思いますが、上申する側も「守り」の効果をうまくアピールできていないのではないでしょうか。

 

 例えば、冒頭の「CFOは企業価値の番人」と定義した元ソニーのCFOの伊庭保氏は同じ記事(※1)の中で企業価値は何によって測られるかについてこう言及しています。

 

“株主価値(時価総額)のほか、非財務的価値も含めるべきです。イノベーティブで魅力

 

ある商品やサービスを生み出す力、品質、ブランド、マーケティング、就職人気度、

 

CSR(企業の社会的責任)、トップの社会的プレゼンスも含まれるでしょう。

 

CFOは、企業理念に照らし、また企業理念を実現するための経営戦略に従って、経営

 

資源を適切に配分し、そして企業価値が向上しているかどうか、評価することが役割

 

ですから、「企業価値の番人」といえます。“

 

 CFOがカバーする領域は財務だけではなく、直接的には財務は関わりが薄いような項目も挙げられていますが、上述の非財務的価値に関連する事業や部門、プロセスを資金の準備、

 

審査、提供という形で支援する以外にも、デジタル投資で財務部門に集約されたお金の動きに関する詳細で大量のデータを活用した事業やプロセスの評価や、財務的見地からのアドバイスなどによって事業運営により積極的に関わることで、企業価値の番人の一翼を担う部門としての経営への貢献を強くアピールできるのではないでしょうか。もちろん経営資源の適切な配分というコーポレート機能においても、従来以上に経営に対するサポートを厚くすることが重要なのは言うまでもありません。

 

 これは新しいことではありませんが、多くの企業の財務部門にとっては大きな変化です。覚悟を伴うチャレンジです。そして、おそらく経営層からも期待されている変化です。

 

■最後に

 

 かつて、財務の「守り」はまず倒産しないように資金繰りをしっかり管理して、会社の存続を守ることが目的でした。しかし、今では、キャッシュに関するマネジメントがベースで

 

あることには変わりがない一方で、守りの範囲や対処すべき相手(課題・リスク)は大きく拡大し、その目的も企業の存続から企業の価値の番人へと変わってきています。

 

 業務の効率化や精度向上は重要です(というか必須です)。

 

ガバナンスの強化も重要です(これ抜きにグローバル経営は成り立ちません)。

 

その上で、企業価値を守る、企業価値の番人としての役割を高める、を正面からぶつけてみてはいかがでしょうか。キリバの提案チーム(営業・プリセールス)はTMSを提案するだけではなく、経営層へのぶつけ方のお手伝いもさせていただいております。

 

 

※2「数字(データ)を活かす」に必要な要素については、本ブログ・シリーズ第一回:「財務業務に必要な3つのレンズも参照下さい

 

屋形 俊哉 (Yakata Toshiya) 

 

キリバ・ジャパン株式会社 プリンシパル コンサルタント
大学を卒業後、大手電機メーカーの経理/財務部門で事業部門担当の経理(原価管理、予算管理、等)や

 

子会社への出向を経た後、本社でグループ会社向けの標準会計システムの開発や導入支援に携わる。

 

2000年にSAPジャパンに転職、以後15年半、会計プリセールスとして製造業を中心に数多くの日本企業への

 

ERP会計及び関連ソリューションの提案活動に従事。その後、しばらくIT業界から距離を置き、

 

2018年4月にキリバジャパンに入社、今度は経理ではなく財務部門の業務改革

 

(もっとシンプルに、もっと柔軟に、もっとワクワクしたものに)をお手伝いすべく活動を再開。
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