【財務用語解説シリーズ】銀行接続プロトコル

1 プロトコルとは

「(通信)プロトコル」とはIT用語で、当事者同士が滞りなく信号やデータ、情報を相互に伝送できるよう、あらかじめ決められた約束事や手順の集合のことです。「通信規約」「通信手順」などと訳されます。具体的には、ファイルを送る時に、送信者はどのように相手を特定するのか、受信者はどのように送信者が本人であるかを確認するのか、どのようなケースをエラーとして、どのようにエラーの内容を返すのか、といったルールの集合体です。

この集合体は、モノとしては、ネットワークや通信ソフトウェアになります。

財務管理システム(以下、TMS)と取引金融機関(以下、銀行)との間でデータの送受信を行う場合、どのような手段でデータを送るか、プロトコルの選択が必要になります。

2 プロトコルの種類

プロトコルの種類としては、SWIFTや、国や地域の銀行協会が定めた標準、IT分野でオープンなプロトコル、ベンダーが開発した通信ソフトウェアなどがあります。TMSと銀行との接続でよく使用されるプロトコルには以下のものがあります。

① SWIFT(世界標準)

SWIFTのネットワークであるSWIFTNetが世界標準です。SWIFTNetでは、SWIFTが発行するBICコード(“ビックコード”、Business Identifier Code)と呼ばれる8桁ないし11桁のIDでお互いを識別します。

(1) 接続手段

TMSからSWIFTNetに接続するには、3つの選択肢があります。

• サービスビューロー(Service Bureau)

SWIFTNetへの接続に関する運用業務をサービスビューローと呼ばれるサービス・プロバイダーに委託する方法です。IT系や通信系のベンダーがこのサービスを提供していて、TMSからはこのサービスに接続することによって、SWIFT経由で銀行にアクセスします。TMSの利用者(事業法人)自ら、SWIFTの会員になり、BICコードを取得する必要があります。

サービスビューローには以下の長所と短所があります。

長所:接続する銀行数および銀行口座数や取引件数の多い企業にとっては、後述のコンセントレーターやアライアンス・ライト2よりもランニングコストを安価に抑えることができます。自らのID(BIC)を持つという点で、事業会社向けに提供されているSWIFTのメッセージサービスを基本的に一通り利用できます。

短所:SWIFTの会員になる必要があるため、初回に一時コストがかかり、加盟手続きに審査を含めて若干の期間が必要です。

• コンセントレーター(Concentrator)

金融機関や、IT系または通信系のベンダーが、事業法人に提供しているサービスです。事業法人はSWIFT の会員になることなくSWIFTNetに接続できます。会員になる代わりに、コンセントレーター・サービスのプロバイダーのBICコードを利用してプロバイダー経由でSWIFT 接続行にアクセスします。

長所:SWIFTの会員になる必要がないため、始めやすく、口座数が少なく取引件数が少ない企業にとっては費用的に有利です。

短所:送金取引等に制約が生じることもあります。コンセントレーターのBICを使っているため、相手行には一義的にコンセントレーターのデータに見え、相手行が行える処理が限られることがあります。またコンセントレーターのIDを借りているという点で、そのプロバイダーへの依存度が高くなり、TMSを変更する時に転用が効きません。

• アライアンス・ライト2(AllianceLite2)

事業会社がより簡便にSWIFTNetに接続できるようにしたクラウドベースのサービスです。2012年7月より提供されています。SWIFT の会員になり、自社のBICを利用してSWIFT経由で銀行にアクセスして、ファイルの送受信を行います。

長所:口座数が少なく取引件数が少ない企業にとっては費用的に有利です。

短所:逆に口座数や取引件数が大きくなった時に却って費用がかかります。

(2) 伝送手段(メッセージング・サービス)

SWIFT接続行とのデータの送受信を行う伝送手段は、3つの選択肢があります。TMSの場合、送るデータのフォーマットによって、その伝送手段が決まります。利用する伝送手段によって利用料金が変わってくることがあります。

• FIN(「フィン」、Financial Messaging)

SWIFTの最も基本的なサービスです。SWIFTのメッセージ標準であるMT(MT101、MT940等)をやりとりするときに使われます。

ファイル転送モード(後述)は、ストア&フォワード方式です。

• FileACT(「ファイルアクト」)

SWIFTのネットワークを通じて容量の大きいファイルを送れるようにしたファイル転送サービスです。JPEGなどの画像ファイルや、PDFファイルなども送ることができます。TMSでこの伝送手段を利用するケースは、全銀フォーマットなどMT以外のフォーマットのファイルをSWIFTNet経由で送りたい場合です。MTのフォーマットを使いながら自動照合用にファイルにカナ文字を含めたいといった、標準規格外の使い方をしたMTのデータを送りたいときにも使われます。

ファイル転送モード(後述)は、リアルタイム方式とストア&フォワード方式です。

• InterACT(「インターアクト」)

XMLによるISO20022メッセージ(2010年より利用され始めている、SWIFTの次世代標準メッセージ。例えば、入出金明細のcamt.053、送金指図のpain.001等)を送る場合の伝送手段です。

ファイル転送モード(後述)は、リアルタイム方式とストア&フォワード方式です。

(3) ファイル転送モード

SWIFTNetには2つのファイル転送モードがあります。ファイルが送られる時に、送信者と受信者がSWIFTNetに接続されているか否かにより処理方法が変わってきます。TMSの場合、そのモードとサービスビューロー等の稼働時間帯との関係によっては、ファイルが送られない、受け取れないというケースも出てきます。

• リアルタイム方式(Real-time file transfer mode)

リアルタイム方式では、送信者と受信者の双方が同時にSWIFTNetに接続していることが必要です。受信側がSWIFTNetに接続していないと、送られたファイルは失われます。銀行が入出金明細ファイルを送った時に、サービスビューローが週末の停止、定期保守、障害等によりダウンしていると、銀行が送ったファイルは失われ、別の時間に再送をしてもらわないといけません。ただし銀行から見ると正常処理をしているので、再送してくれないこともあり、その場合は手でデータを作ることになります。

• ストア&フォワード方式(Store-and-forward file transfer mode)

送信者が送信したファイルが一旦SWIFTのセンターに蓄積されたうえで、受信者に送信される方式です。ファイル送信時に、受信者がSWIFTNetに接続していなくても、受信者が接続した時点でファイルが配信されます。したがってサービスビューローが停止していても、再開時にデータが送られるので、ファイルが失われることはありません。

TMSから見ると、ファイルが失われることのない、ストア&フォワード方式の方が好ましいことは言うまでもありません。しかしながら、どちらの方式で銀行が送ってくれるかは、多くの場合銀行に依存します。

 

② 国や地域の金融機関関係の標準

代表的なものとして、ヨーロッパではドイツやフランスで使われているEBICS(「イービックスまたはエビックス」、Electronic Banking Internet Communication Standard)、日本では全銀協標準通信プロトコル(以下、全銀手順)とANSER(「アンサー」、Automatic answer Network System for Electronic Request)があります。ここでは、日本の全銀手順とANSERについて紹介します。

(1) 全銀協標準通信プロトコル(全銀手順)

全国銀行協会により公表された金融機関同士、金融機関と事業法人との間の接続方式で、仕様は公開されています。1983年にベーシック手順として制定され、1997年にはTCP/IPを用いるTCP/IP手順が制定されて、高速な通信ができるようになりました。

TMSから全銀手順によって銀行に接続するには、概ね下記の3つの方法があります。

①自社内に全銀手順接続のゲートウェイサーバーを設けて、TMSと銀行との間で通信をする方法。ゲートウェイサーバーは、自社開発したりEDIパッケージを利用します。

②全銀手順による接続機能を有しているTMSを利用する方法。

③全銀協手順に対応したEDI通信ソフトをパソコンにインストールする方法。ファイルを銀行へ送る場合は、TMSからファイルを手でダウンロードして、EDI通信ソフトにアップロードして送信します。

コストは、①が最も高く、③が極めて廉価ですが、③は手作業が入ります。①の場合でも経理システムなどで既存の仕組みがあって転用できる場合はコスト負担が低くなりますので、導入の狙いと既存システム環境等を考慮して選択します。

(2) ANSER

株式会社NTTデータが、1981年から金融機関向けに提供しているサービスで、円預金の残高照会や入出金明細の連絡、円預金間の振込・振替などの金融取引を電話やパソコンなどさまざまな端末で行えるようにするサービスです。金融機関はこのサービスを利用して「アンサーサービス、ANSERサービス」等の呼称で企業向けにサービスを提供しています。

TMSから観たANSERの特長は以下の通りです。

①ワンストップでマルチバンク接続が行えること。全銀手順では1行ずつ接続しなければなりません。そのためANSERはマルチバンクのプーリングによく使われています。

②リアルタイムの振込ができること。全銀手順はバッチ処理をベースにしていますので、送金については振込日の1日前や3日前など事前にデータを銀行に送信する必要があります。ANSERであれば個人がATMで行っているように、TMSからも即時の振替・振込ができます。

企業は、ANSERサービスを利用することにより、TMSでそのメリットを享受できます。ANSERサービスのご利用には以下の3つの方法があります。

①NTTデータのeBAgentサービスを利用する方法。eBAgentは、TMSと親和性の高いコネクティビティによりANSERとの取引データ送受信を全て自動化します。eBAgentに接続するためには、企業内にそのためのゲートウェイサーバーを用意する必要があります。

②ANSERサービスを利用できるTMSを選択する方法。

③金融機関が提供するパソコンバンクソフト(VALUX対応ソフト等)やインターネットバンキングサービスを利用する方法。廉価ですが、TMSとの間はファイルのダウンロードとアップロードを手で行う必要があります。

 

③ オープンなプロトコル、ベンダー製のファイル転送ソフトウェア

金融機関に特化したプロトコルではありません。TMSと銀行を直接接続する時に使用されます。もっとも多く使われるプロトコルはセキュアなFTP(SFTP、FTPS)です。

直接接続する時は、TMSと銀行との間でプロトコルが決まっていますので、TMSの利用者がプロトコルを意識する必要はほぼありません。

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