Success Story

荏原製作所

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海外事業を展開する企業にとって忘れてはならないのが、資金管理・財務管理体制のグローバル化である。本社と現地法人が個別に資金管理・財務管理を行っているようでは、資金の有効活用が行えない上に、粉飾などの不正リスクにもさらされてしまう。大手産業機械メーカーである荏原製作所は、世界中に展開するグループ子会社の資金可視化に着手し、モニタリング精度の向上や資金管理・財務管理業務の効率化などのメリットを得ることに成功した。

荏原製作所

グローバル資金管理・財務管理の実現がビジネスを成長に導くドライバーに、財務情報の可視化がいまなぜ重要なのか。荏原製作所・経理財務統括部の青木氏、佐藤氏、津川氏よりお話を伺った。

荏原製作所
荏原製作所
経理財務統括部
財務部長
青木 仁氏
荏原製作所
荏原製作所
経理財務統括部
財務部 財務企画課
担当課長
佐藤 美歩氏
荏原製作所
荏原製作所
経理財務統括部
財務部
財務企画課長
津川 卓也氏

海外子会社の財務情報可視化が大きな課題に

風水力機械や環境プラント、精密・電子などの分野において、産業/公共インフラを支える高品質な製品群を提供する荏原製作所。同社では中期経営計画「E-Plan 2019」のもと、事業収益性向上を目指す活動を推進。ポンプ生産の自動化に向けた設備投資や、海外拠点におけるサービス&サポート事業の拡充など、様々な施策を展開している。

同社の青木 仁氏は「私たち財務部門でも、成長投資や財務規律の維持など、幅広い領域にわたる取り組みを実施しています。高い収益性を確保するために、国/事業別にハードルレートを設定して、投資判断を行う仕組みなども構築しています」と語る。

その財務部門において、近年の重要なミッションとなっているのが、全社の資金管理体制強化だ。その一環として、国内子会社を対象としたキャッシュマネジメントシステムを構築。100 億円以上の余剰資金を圧縮するなど、様々な成果を上げている。

そして、さらに次のステップとして着目したのが、海外子会社の財務情報の可視化である。青木氏はその背景を明かす。

「事業のグローバル化が進む中で、当社の海外売上高比率も 10 年前の約 30% から 50% 以上へと大きく伸びています。必然的に海外拠点の数や規模も拡大し、現地が保有するキャッシュの総額も膨らんできました。こうなると資金効率が低下するおそれもありますし、リスク管理の面でも問題になってきます。そこで、海外子会社の財務情報にも、しっかりと目が行き届くようにしたいと考えたのです。」

– 荏原製作所 経理財務統括部 財務部長 青木 仁氏

従来は、四半期ごとに送られてくる財務諸表ベースでしか各社の状況を把握できず、通貨別や国/地域別の分析なども思うように行えなかったという。国内向け事業がメインだった時代ならともかく、売上高の半分以上が海外となった現在では、こうした状況を早急に改善するシステム導入が必要だったのだ。

キリバの多面的な分析機能と導入ステップ

また、キリバ・エンタープライズの多彩な機能や優れた使い勝手も、採用の大きな要因になった。導入に携わり、現在もユーザーとしてかかわる同社の佐藤 美歩氏は次のように語る。

「例えば、特定の子会社や地域にどれくらい資金があるかといったことを、グラフなどのビジュアルで簡単に表示できます。いろいろな角度で多面的な分析が行える機能が揃っているのは、非常に便利だと感じました。」

– 荏原製作所 経理財務統括部 財務部 財務企画課 担当課長 佐藤 美歩氏

ちなみに同社では、将来的に本社・海外子会社間でプーリングを行う構想なども描いているが、こうしたニーズに対応できる機能が最初から備わっている点も高く評価したという。

「具体的な導入ステップとしては、多くの資金を保有している拠点、本社として関与を強めておきたい拠点、それに海外駐在員事務所の 3 つを対象に導入に取り掛かりました」と青木氏。導入には本社・子会社・銀行の 3 者間の調整に時間がかかるケースもあるとのこと。「キリバの支援を受けながら作業を丁寧に進めたことで、関係者は大変協力的でした。16 拠点・約 80 口座の可視化を、3〜4 カ月で終えることができました」と佐藤氏は話す。

資金可視化率やモニタリング精度を大幅に向上

こうして導入されたキリバ・エンタープライズは、財務業務の様々な場面で有効に活用されている。青木氏は次のように話す。

「グループ全体で保有している資金に対し、本社財務部門が把握できている資金の比率を『モニタリングキャッシュ比率』と名付け、これを KPI 化して目標管理の指標としています。以前は 50% 程度でしたが、キリバ・エンタープライズ導入後は 80% 前後と、資金可視化率が大きく向上しました。」

– 荏原製作所 経理財務統括部 財務部長 青木 仁氏

本社がリアルタイムに把握できる割合が増えたことで、資金効率の向上やリスク低減の検討につながっているという。

また、キリバ・エンタープライズから出力される各種のレポートも、戦略的な財務業務の実現に貢献。現在では、地域別や企業別、通貨別など、様々な切り口で情報をグラフ化して地図上にマッピングしたり、資金の動きを日次ベースで追うといったことが可能である。「四半期ごとにしか情報を管理できなかったころと比べれば、モニタリングの精度やレベルは格段にアップしています」と青木氏は強調する。

このような環境が整った結果、変化に対するアクションもよりスピーディに起こせるようになった。同社の津川 卓也氏は次のように話す。

「政情変化などによって海外拠点との資金取引に懸念が生じた場合も、その拠点がいまどれくらいの資金を持っているのかをすぐに本社側で確認できます。キリバ・エンタープライズがなければ、現地から事業部、本社へと伝言ゲームで報告してもらうことになりますので、手を打つスピードが圧倒的に違います。」

– 荏原製作所 経理財務統括部 財務部 財務企画課長 津川 卓也氏

同社では、こうした効果をより拡大すべく、今後もキリバ・エンタープライズの活用を推進していく考えだ。津川氏は「可視化のメリットを最大限に生かせるよう、製品機能の使いこなしに力を注いでいきたい。また、キリバからは、可視化が困難な中国へのアプローチ方法、海外でのプーリングを見据えた口座の統廃合など、様々な提案やアドバイスもいただいており、これも大いに役立っています。今後も是非、手厚いサポートをお願いしたいです」と期待感を示す。

「グローバル資金・財務管理業務の高度化を通して、成長投資のさらなる強化やビジネスの発展に寄与していきたい」と抱負を語る青木氏。一層の飛躍を目指す荏原製作所の今後が非常に楽しみである。


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荏原製作所が導入した資金管理システムの画面例

グローバルに展開する海外拠点それぞれの資金状況がひと目でわかりやすく表示される。それまで四半期ごとの財務諸表ベースでしかわからなかった状況がすぐに把握できるようになり、経営判断のスピードもあがったという。