【ヤンマーホールディングス様事例】資金効率を高めて支払い利息を圧縮 ファクトベースで戦略的な財務を推進


  • 創立
    1912年(明治45年)
  • 本社
    大阪(日本)
ヤンマーホールディングス株式会社

事業概要:農業機械・農業施設、建設機械、エネルギーシステム、小形エンジン・大形エンジン、マリン、コンポーネントなどの研究・開発、製造、販売
本社:大阪府大阪市北区茶屋町1-32 YANMAR FLYING-Y BUILDING
創業:1912年(明治45年)
資本金:9000万円
URL:https://www.yanmar.com/jp/

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多様な事業をグローバルで展開するヤンマーグループは、海外ビジネスを拡大しており、M&Aにも積極的だ。グローバルなガバナンス強化は必須のテーマであり、資金効率の向上も目指している。そこで、資金の動きを可視化してガバナンスやリスクマネジメントのレベルアップを図り、同時に、世界各地の地域本社を中心にプーリングを実施。資金を地域内で融通することで、支払い利息を数億円レベルで圧縮することに成功した。グループ全体の資金状況の可視化を通して、戦略的な財務を強力に推し進めている。

戦略的財務を推進する原動力となったヤンマーグループの変革の内容とは?

ガバナンス強化と資金効率の向上を目指す

産業用や船舶用のディーゼルエンジン、農業機械、建設機械、エネルギーシステム、マリンプレジャー、コンポーネントなど幅広い事業をグローバルで展開するヤンマーグループ。連結で現在約8000億円の売上規模だが、1兆円を目指すという目標を掲げている。そのためにも、海外事業の拡大は不可欠だ。現在50%ほどの海外事業比率をさらに高めようと、海外でのM&Aも積極的に推進している。

「海外ビジネスの割合が大きくなる中で、グローバルガバナンスの強化は重要な課題となっています」とヤンマーホールディングスの矢野 芳和氏は話す。特に海外M&Aでは、一般的に買収企業の統合に手間取り、リスクのあるプロセスが温存されるケースも少なくない。こうした事態を避けるために、財務部としてもガバナンス強化のための基盤づくりが求められていた。また、不正防止やコンプライアンス確保も必要だった。


ヤンマーホールディングス株式会社
財務部 財務グループ
課長
矢野 芳和氏

「最近、世間では偽メール詐欺や送金事故、従業員の不正といったニュースをよく聞きます。お金に絡む犯罪への対策強化の必要性も高まっています」と矢野氏は語る。

一方で、グループ資金の効率化というテーマも重要だ。「銀行借り入れをいかに減らすか、あるいは増やさないようにするか。それはグループ全体の経営課題です。以前は、同じ地域でも余剰資金がある会社と借り入れが多い会社がグループ内で並存し、グループとしては効率の悪い状況でした。また、子会社によっては、手元資金を確保したいために、銀行への預金・借り入れの両建てがかなりのボリュームになっているケースも見られました。グループ内で資金を融通する仕組みを整えれば、借り入れの圧縮が可能になります」(矢野氏)。

そこで財務部が打ち出したキーワードが、「可視化」と「資金効率」である。可視化を進めることで、本社及び世界5極の地域本社(欧・米・中国・シンガポール・日本)から各国の子会社へのグリップを強め、同時に、グループ内の余剰資金をプーリングして銀行借り入れを減らす。プーリングは余剰資金を一元管理する仕組みで、グループ内の資金を効率的に活用することができる。ヤンマーグループは、世界5極 それぞれでの可視化と資金効率の向上を目指した。

このような狙いから、同グループは2015年、キリバが提供するクラウド型資金・財務管理ソリューション「キリバ・エンタープライズ」を導入した。

キリバ利用への投資対効果を中国・東南アジアの支払い利息圧縮により大幅に実現

国内に関してはすでに一定の可視化やガバナンスを確保できていることから、導入対象を海外に絞った。小規模な子会社まで含めると費用対効果が低くなるので、比較的資金規模の大きい子会社を中心に約50社に導入。これにより、海外における資金全体の8割強をカバーしているという。

実は、キリバ・エンタープライズを選定する過程では、メガバンクが提供する同種のサービスも検討した。ただ、メガバンクの場合には、他行の銀行口座を維持したままで、口座の残高情報などを集約するのは現実的には難しいと判断した。取引銀行の集約は銀行間のバランスをくずすことから好ましくないとの判断もあり、キリバ・エンタープライズを選んだという経緯がある。

キリバ・エンタープライズ導入とプーリングの実施に当たって、同社は他社の経験から学ぼうとした。矢野氏はこう振り返る。

「まず、中国の現地法人にプーリングを展開しようと考え、いくつかの日系企業にヒアリングを行いました。その際、失敗原因として指摘されたのが資金の抱え込みです。『自分たちが稼いだお金を吐き出したくない』『いざというときのために、手元に置いておきたい』と現地法人は考えがち。まずは、各現地法人を説得する必要があります」

中国でのプーリングの実務を担ったのが、ホールディングス財務部から上海の中国地域本社に転じた洋馬発動機(上海)の増田 佑平氏である。増田氏はキリバ・エンタープライズ導入を担当した後、2017年に中国に赴任した。

「中国地域本社の傘下にある現地法人の中で、キリバ・エンタープライズを適用したのは5社。基本的にプーリングはスムーズに進みましたが、1社だけ消極的な現地法人がありました。同社は日本の本社から親子ローンを借りていたので、『親子ローンよりも、プーリングを利用したほうが金利は安いですよ』などと説得して参加してもらいました」と増田氏は話す。


洋馬発動機(上海)有限公司
企画管理部 資金グループ
経理
増田 佑平氏

キリバ・エンタープライズ導入とプーリング実施による効果は、数値として表れているという。「例えば、青島にある生産拠点には以前、月商の2~3カ月分のキャッシュを置いていました。プーリングを始めてからは徐々に減り、現在では0.1~0.2カ月分に圧縮。余剰資金はほとんどなくなり、資金効率は向上しました」と増田氏は説明する。

財務のグローバルプラットフォームとして日々キリバを活用していますが、中国アジアの支払い利息圧縮だけで、キリバ利用の総費用を大幅に上回る効果が出ているという。

可視化で実現するファクトベースの話し合い

プーリングを進める上で、可視化は重要な意味を持つ。一般的に、余剰資金を吐き出したくない現地法人は、「もうすぐ資金需要のピークが来ます」などと後ろ向きの姿勢を示すこともある。しかし資金の動きを可視化すれば、「プーリングを拒むための言い訳」は通用しない。

「以前は、『ピークに備える』と言われれば、地域本社は『そうですか』と引き下がらざるをえませんでした。いまは、各社の銀行残高や資金繰りの状況について、本社と地域本社の財務担当者は見たいときに見ることができます。グループ内での話し合いを、ファクトに基づいて行えるようになりました」(矢野氏)

キリバ・エンタープライズによる財務の可視化はガバナンスだけでなく、グループ内コミュニケーションの質を高めてもいるようだ。ヤンマーホールディングスの廣瀬 就一氏はこう説明する。

「以前は、本社で現地法人の資金繰りなどを見る機会はあまりなく、基本的には各社任せの状態でした。いまでは、本社や地域本社を含めて関係者が情報を共有しているので、会議では突っ込んだ話ができますし、その中で気づきを得ることもあります。資金繰りの状況から、業績悪化などの経営課題にアプローチすることもできます」


ヤンマーホールディングス株式会社
財務部 財務グループ
廣瀬 就一氏

キリバ・エンタープライズ導入を機に、ヤンマーグループのグローバルな財務体制は大きな変容を遂げた。その効果は「想定した以上」と矢野氏は話す。


ヤンマーホールディングスが導入した資金管理システムの画面例
グラフなどを多用して分かりやすく表示されたファクトを共有することで、コミュニケーションの質が高まる。地域ごと、現地法人ごとの資金繰りや口座残高などの状況を一目で把握することができる

「クラウドサービスなので毎月の利用料が発生しますが、導入後、それ以上の効果を、支払い利息の圧縮などで実現できました。また、M&Aなどによりプーリングに参加する企業は増え続けているので、毎年、効果も増加する方向にあります。」

同社は今後さらにキリバ・エンタープライズの活用度を高め、グローバル財務の取り組みをさらに高度化しようとしている。例えば、為替管理や支払いの分野では、リスクマネジメントのレベルアップを目指すという。ヤンマーグループが推進する戦略的な財務において、キリバ・エンタープライズは不可欠なプラットフォームとして定着している。

*本記事は日経ビジネス電子版(2020年3月)に掲載

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